第529話 獣人に遭遇
なんとかハートマンの訓練を終えたカズトはショウの所にきていた。
「ショウ〜訓練終わったから何処かに連れて行ってくれよ〜」
机にうつ伏せになりながらもショウにお願いしていた。
「何処かといってもね、別に観光地が有るわけじゃないし。」
「なんかあるだろ?こうファンタジーな感じの何かが!」
カズトの問いにショウは庭を指差す。
「ほら、そこに日本では見られない光景があるよ。」
ショウの指差した方向には鬼を始め様々な妖怪が訓練していた。
「あれは充分見た、この一週間ずっと横でやってたから、もういい。
そうじゃなくて、ケモミミ娘とかエルフ娘とかいるんじゃないのか?」
「女の子ばかりだな。」
「男は女を求めるものなんだよ、なあいるんだろ?」
「うーん、カズトに合わせていいかに迷うな。」
「なんでだよ!」
「なんか犯罪臭がする・・・」
「しねぇよ!!」
カズトの熱心な説得に負けて、屋敷にいるポメという女の子を呼ぶ。
彼女は犬の獣人で、親に捨てられていた所をヘルマン達のグループが保護し、今まで過ごして来た。
年齢は11歳なのだが、周りの子供より、成長は遅く、さらに年下に見える。
「わん、ショウ兄ちゃんだ♪」
ポメはスカートから出ているシッポをブンブン振り回して飛びついてくる。
「ポメ、落ち着いて、スカートが捲れるよ。」
「ショウ兄ちゃん♪」
ポメは聞くことなくとショウにすり寄る。
「ポメ、おすわり!」
「はっ!はわわ・・・」
ショウのホッペタを舐め始めた所でショウはポメに座るように指示を出す。
すると、ポメは大人しく正座をするのだが、ソワソワしててすぐにまた飛びついて来そうだった。
「ショウ、この子は?」
「犬の獣人のポメちゃんだ、見ての通り、まだ子供で犬の習性が強く出てるんだ。」
「いやいや、こんなカワイイ子に迫られるなんて、約得じゃねぇか。ほらポメちゃんおいで〜」
カズトはポメを呼ぶもポメは器用に座ったまま、後ろに下がる。
「カズト、ポメは少し人見知りするんだ、すぐに誰にでも懐いたりしないんだ。」
「なんでだよ、ショウにあんなに懐いているのに。」
「それは俺もここでの生活長いからね。
それなりに付き合いはあるよ。」
「なっとくいかねぇ〜」
カズトは不満そうに頬を膨らましている。
実際ポメは犬の習性から、家族をよく観察しており、誰に懐くべきか充分理解してから懐いているのだが、ショウはその事を知らなかった。
「ちょっと、ショウ!ポメちゃんを呼び出したってどういうことよ!」
ミキが慌てたように部屋に入ってくる。
「ミキ、カズトが獣人を見たいって言ってたからね。」
「ポメちゃんを呼ぶときは私がいる時にしてって言ってたよね?」
「あはは・・・・」
ミキはポメがショウに懐いているのをよく思っていなかった。
犬の習性とはいえ、彼氏に飛びつき舐め回すのだから当然と言えば当然なのだが。
ちなみにミキが入って来た時から怒られると思ったポメはショウの後ろに隠れている。
「ポメちゃん、ショウから離れてくれるかな?」
「ミキおこらない?ポメを叱るの?」
「私はショウを叱るの。」
「ショウ兄ちゃんをしかっちゃだめ・・・」
ミキが怖いながらも大好きなショウを守ろうとショウの横から顔を出して抗議する。
「ポメちゃん、ショウは私の彼氏なの、ポメちゃんがショウを慕っているのは知ってるけど、もう少しだけ距離を取ってほしいかな?」
「ショウ兄ちゃんはショウ兄ちゃんだよ。」
ポメには何が悪いかすらわかっていない。
犬の獣人は成人するまで犬の習性が強く、本能で動く事が多い。
騒ぎを聞いて俺も部屋を訪れる。
「ミキちゃん、ポメを許してあげて。」
「おとうさん。」
「ヨシノブさん、でも・・・」
「まだ子供なんだよ、ほらポメおいで。」
ポメは今度は俺に抱きつきすり寄り始める、俺はポメを抱っこして立ち上がる。
「ほらいい子だ。ショウくん、ミキちゃんが嫉妬するからちゃんと約束は守るんだぞ。」
「はい、ミキごめん。」
「わかればいいのよ。」
ショウはミキに謝り、一段落するのだが・・・
「ヨシノブさん、俺にも抱っこさせてください。」
カズトがポメを抱っこしたいと言いだす。
「ポメ、どうする?」
ポメは顔をブンブン振って拒絶する。
「駄目みたいだ、何度か会ったら大丈夫になるかも知れないけど、悪いけどそれまでは無理だね。」
「そんなぁ・・・」
カズトは膝をつき地面を叩き悔しがる。
俺は悔しがるカズトを置いてポメを連れて行くのだった。
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