第450話 テルの呪符

「テルさん、お願いします!」

「「お願いします。」」

ヨシノブを部屋に運び込み、サリナを筆頭に子供達はテルに頼み込む。

「大丈夫だよ、すぐに治すならね。」

テルはヨシノブに呪符を貼っていく。


「テルさんそれは?」

「タチの悪い呪いにかかってるみたいだからね、この呪符で身体から追い出すんだよ。

そうしたら傷も治るようになるよ。」

話しながらも傷口周辺に呪符を貼っていく。

「さて、始めようかねぇ・・・六根清浄、急急如律令!」

テルが呪文を唱えると呪符が光りだす、

「さて、どんなのが出るかね。」

傷口から黒い煙が立ち上り始める。

「これは・・・」

サリナは息を飲む。


「これが呪いだよ、触るんじゃないよ。

下手に触ると呪いがうつるからね。」

「ぐぅぅぅ・・・」

ヨシノブから苦しそうな声が漏れる。

「ヨシノブさん!」

サリナがヨシノブに近付こうとするが、

「待ちなさい!触るなといったよ。」

「ですが!」

「呪いを身体から出しているだけだよ、それより今触るとサリナさんに移りかねないからね、全部出るまではそこで見てなさい。」

ヨシノブを心配そうに見つめるサリナをおいて、テルはヨシノブの身体から黒い煙が無くなるまで祈りを捧げる。


「こんなところかね。爺さんやあれの処分任せたよ。」

「うむ。喰らえ魂食。」

アキラは刀を振るい黒い煙を斬ると煙が無くなる。

「サリナさんもう大丈夫だよ。ヨシノブさんの傍に行くといい。」


テルの言葉にサリナはヨシノブにかけよる。

「ヨシノブさん!」

「・・・うっ、俺は・・・あれ、サリナどうしたの?」

「ヨシノブさん・・・」

サリナはヨシノブにすがり泣いていた。

「え、えーと、どういう状況なのかな?」

ヨシノブは事態が飲み込めず困惑していた。


泣き続けるサリナをなだめつつ、

アキラから事情を聞くと、どうやら軟弱な俺は後ろからきた剣の侵入を筋肉で阻止することができず、重傷をおい、愚かにも微弱な呪いに負け、血を垂れ流す醜態を晒していたらしい。


「あれ?俺が悪いの?」

「悪いに決まっておろう、油断して背中に傷を作るとは士道不覚悟である。世が世なら切腹ものじゃ。」

「いや、侍じゃないし、それっていつの時代だよ。」

「情けない、そんなのじゃから後ろから魔剣ごときに刺されるのじゃ、剣の1本ぐらい気合で止めんか。」

「いや、人間剣に刺されたら止めれないよね?」

「気合で止めるのが日本男児じゃ。」

「俺の知ってる日本人とは違う気がします・・・」

「訓練が足らんだけじゃ、よし、今度からは身体を重点的に鍛えるか。」

俺に冷や汗が流れる・・・


「アキラさん!ヨシノブさんは病み上がりですから訓練は禁止です。

ヨシノブさん、身体で変な所は無いですか?」 

サリナはアキラに割って入り、俺の身体を触っては確認していく。

「大丈夫かな?多分だけど、傷も無いし。」

「よかった・・・」

サリナが安心したのと同時に部屋の外で待っていた子供達が流れ込んでくる、

「「「おとうさん!!」」」

「みんな騒々しいよ。でも、ありがとう。

おかげで治ったみたいだ。」

「うにゅ・・・心配したのよ・・・うわぁぁぁぁん!」

シモは泣きながら抱きついてくる。

俺はみんなが落ち着くまで大人しくするしかなかったのだった・・・

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