第421話 避難計画

俺が食料配布を続けている中、ルクスはシリアと共に避難計画を立てていた。

「シリア、港にある巨大な船に住人の誘導を頼む。」

「ルクス様がお越しになられた船ですか?」

「そうだ、あれならかなりの数の人が乗船できる。」


ズムの行政を管理していたクベの意見は、

「ルクス様、お言葉ですが貧民はともかく権益を持つものは街を離れないかと。

ズムの街に滞在する計画はないのですか?」

どうやら避難自体に反対のようだった。


「クベよ、この地にとどまって生きていけるのか?」

「ですが、離れたくない住人を無理矢理連れていく訳にもいきません。」

「見ろあの山を!もしあの火がこちらに向って来たらどうするのだ!」

「あの火がこちらに来たことなどありません。

不必要に不安を煽るのはお止めください。」

「クベ、ルクス様は私達の為に来てくださったのです。

ここはルクス様に従い避難することを考えましょう。」

「シリア様、この地を離れる事を軽くお考えにならないでください。

押し付けられたとはいえ、レン様からの御命令にございます。

無断で離れるとどのような罰がシリア様にくだされるか・・・私はそれが心配なのです。」

ルクスに賛同しようとするシリアの言葉にクベは反論する。


「クベ、私の事はいいのです。

それより住人を第一にお考えなさい。」

「しかし!」

「命令です、クベ。街に布告を出してください。

私の名前において住人に避難勧告を出します。従わない者には罰があると。」

「・・・か、かしこまりました。」

クベは命令と言われた以上従うしか無かった。


クベが布告を出しに行ったあと、ルクスはシリアに聞く。

「あれ程強行してよかったのか?」

「ええ、クベが私の事を心配してくれるのは嬉しいのですが・・・

今は住人の命が大事な時です、不満は飲み込んでもらうしかありません。」

「シリア、すまない。」

「ルクス様に謝ってもらうことなんてありません。

それより住人をお願いします。」

シリアは改めて頭を下げる。

「任せておけ、シリアの大事な民だ。

俺にとっても大事な民になる。」

ルクスとシリアは互いに抱きしめあっていた。


「申し上げます。」

「な、なんでしょう!」

急な知らせにルクスとシリアは慌てて離れる。


「はっ!ルクス様のお連れ様による救援物資配布所にてトラブルがあった模様にございます。」

「ヨシノブの所でトラブルだと!

いったい何があった!」

ルクスは慌てて聞く。

「はっ、食料を求める領民の一分が暴徒とかし、配布していた娘を殴った模様にございます。」

「や、やばい!何人死人がでた!」

「い、いえ、死人は出ておりません。ですがそれ以降、異形の者がどこからともなく現れ見張っているため、住人から苦情が来ております。」

「苦情など放っておいていい、そうか死人は出てないか、ヨシノブ達も加減してくれたか。」

「加減ですか?」

「ああ、ヨシノブが暴れ出したらこの街の住人全てが襲いかかっても太刀打ち出来ない。

くれぐれも敵対行為はしないと各所に通達してくれ。」

「かしこまりました、至急連絡を回します。」

シリアはすぐさま、連絡を回した。

しかし、すでにガラハが騒動を起こしたあとであった・・・

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