第380話 きな臭く・・・

サリナが出産という一大イベントが繰り広げられている中・・・


かつてツバサから魔王の心臓抜き取ったアーロンはヨシノブの基地近くに来ていた。

「異世界人の心臓に魔法が宿るか・・・いったいどんな魔法なんだろうねぇ・・・」


アーロンは魔王の心臓から魔王の膨大な知識を得ていた、その中で異世界人の心臓の奥に秘められた魔法が埋められていることを知る。

試しにツバサから抜き取った心臓から魔法を得ようとしたが、魔王の魂により変質しているせいか、取り出せたのは相手を発情させるというチンケな魔法だけだった。

それでも世界にある魔法よりかなり凶悪な力を持っており、この世界の魔法で防ぐ事が出来ない事が実験でわかっていた。

アーロンはさらなる魔法の知識を得るために異世界人の心臓を求める。

そして、魔王経由の記憶でヨシノブ達の存在を知る。

ただ、アキラが側にいる以上容易く襲撃など出来ないが、現在アキラが船で出ていっているのは鳥の使い魔から連絡が来ており、現在地も随時報告を受ける手筈を整えている。


今がまさに襲撃の機会なのだ・・・

「さあ、魔法の真髄を得る糧となるのだ。」

アーロンは魔界の魔物達を大量に召喚したのだった。


一方、アーロンが来る少し前、

屋敷にはマックスが空気を読めずにやって来ていた。

「今日は誰も入れません!」

「カ、カルラさん?」

「今は取り込んでいるんです!私も早く行きたいのですから、マックスさんは早く帰ってください。」

カルラはソワソワして心ここにあらずという感じであった。

「何が起きているんですか?」

「おかあさんが出産しているんです!お願いですから帰ってください!今日は来客の対応を出来る余裕は無いんです!」

「それならば、王都から産婆を呼ぼう!」

「間に合っています!私達は事前に準備が済んでますから、今日は帰ってください。」

「ならば、私も立ち会おう!」

「いいですから、今日は家族だけでいさせてください!」

余裕の無いカルラは帰ってくれないマックスに段々と語尾が荒くなる。

「カルラさん・・・」


二人が揉めているところにリョウが来る。

「カルラはサリナさんの所に行っていいよ、ここは俺が対応するから。」

「リョウさん、ありがとうございます!」

カルラはリョウに頭を下げ、急ぐように奥に走っていく。 

「リョウ、なんで邪魔を!」

「マックス、噛みつくな。あのままだとお前は嫌われていたぞ。」

「えっ?」

「お前は他国の貴族だ、気を使わなくてもいいと言われても、対応しなくてはいけない、そしてカルラはお前の対応を任されている。

どうしても手を取られてしまう。

だが、カルラもこの日に備えて医療を学び準備してきたんだ、サリナさんの出産に立ち会いたいだろう。」

「なら俺も・・・」

「だから、お前は現時点で家族じゃないんだ。

俺やルクスは既に身内としての認識だから中に入れるし、気も使われない。

だが、マックスは他国の貴族なんだ。

今後仲良くなれば状況は変わるかも知れないが現状は違う、

王女のリズさんも屋敷に住んでいたが気を使って今日は城に帰っているんだ。

お前も少しは気を使え。」

マックスは悔しそうにしていた、だがリョウの言うとおり、現状自分は他国の貴族であった・・・


「わかった、今日の事は謝罪する。

落ち着いたら出産祝いを持ってまた来る。」

「わかってくれて嬉しいよ。

・・・悪いな、マックス。」

「いや、忠告ありがとうリョウ。

ここで無理強いをしたら、きっとカルラさんは許してくれなかっただろう。」

「カルラも感情的になっていたからね、許してあげて。」

「カルラさんを許すも何も、悪いのは俺だし・・・って、リョウ何でカルラさんを呼び捨てに?」

「マックス、目が怖いぞ。

他意はない。家族として暮らしているから。」

「羨ましい・・・リョウ、カルラさんに気は無いよな?」

「無い、そもそも俺は自分の国に婚約者がいるんだ、それに親友の娘に手を出す気も無いな。」

俺の言葉に満足したのか、マックスはこの時は帰って行ったのだった。

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