第377話 秘密が・・・

「うん?シモそんなに急いでどうしたんだい?」

「おとうさん、聞いてほしいのよ、リミとカルラがケンカしてたのよ。」

シモは身振り手振りを加えながら俺に訴えかけてくる。

「二人がケンカ?二人とも仲がいいと思ってたけど?」

「譲れない問題のようなのよ!」

「譲れない問題かぁ・・・原因は何かな?」

「この本なのよ!」

シモは手にしていた本を振る。

シモが振っているためよく見えなかった。


「あっ!それは・・・」

サリナは本に気付いた、すぐさまシモに声をかける。

「シモ、それって女の子の秘密とか言ってなかったかな?」

「うにゅ?・・・乙女の秘密なのよ。

でも、シモはおとうさんに秘密を持たない主義なのよ。」

シモはなぜといった感じで首を傾げる。

その姿を見たサリナは頭が痛そうにおさえている。


「乙女の秘密か、なら俺は知らない方がいいのかな?

サリナ、喧嘩の仲裁頼めるかな?」

「ええ、私がしておきますから、シモこっちに来て。」

「おかあさんに呼ばれたのよ〜♪」

シモは俺からサリナの元に寄っていく。


そして、サリナはシモを連れて女の子達が集まっている部屋に向かう。

「あなた達、ケンカをするならこの趣味は禁止にしますよ!」

「「そんな・・・」」

「そもそも、ヨシノブさんを題材に使うなんて・・・」

サリナの視線が本の表紙にチラチラいっていた。


「腐腐・・・サリナさん、今日のお詫びにこの本を差し上げます。捨てるなり燃やすなり好きにしてください。

あっ、もちろん読んでもいいですよ?」

カエデはサリナに甘い誘惑をかける。

元々サリナを引き摺り込む為に作った本だった。

サリナがこちら側の素質があることはカエデが感づいていた。


「読みません!」

「ですが、ヨシノブさんの絵が書かれている本を燃やす訳にもいきませんよね?」

「それは・・・」

「なら、サリナさんが責任を持って管理していただけたらいいんですよ。」

カエデは言葉巧みにサリナに所持させようとする。

そして、所持さえすれば目を通すと確信していた。

「わかりました、私が管理します、カエデさんは今後ヨシノブさんの本を書かないようにしてください。」

「ええ、サリナさんの許可がない限り書きませんよ。」

カエデは本を段ボールに入れてサリナに預ける。

サリナは子供達に手伝ってもらって倉庫に持っていくように指示を出していたが・・・


「はい、ストップ。」

リョウが止めに入る。

「リョウさん、ここは女の子の宿舎ですよ!」

「うん、知ってる。でも、これは見逃せないね。」

リョウは段ボールの中の本を取り出す。

「あっ!それは・・・」

サリナは少し慌てていた。

「別に趣味をどうこういうつもりは無いよ、でも、俺も描かれるのは嫌かな?」

「はい、ですから倉庫にしまおうと・・・」

「置いてたら誰かが見るだろ?やれ。」

リョウの言葉にネズミが大量に現れ本を喰い散らかす。


「なんてことを!」

カエデとリミを含むヨシノブ本肯定派から悲鳴が漏れる。


「存在が無ければ読むことは出来ないよね。

これに懲りたら俺を使用するのは止めてもらえるかな?」

項垂れているカエデ達に声をかける。


残されたのはネズミに食い尽くされ、跡形も無くなった残骸だけだった。

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