第274話 マックス襲来

翌日、俺の屋敷にマックスがやってきていた。

「さあ!ヨシノブ空の旅に案内してくれ!」

「マックス、朝早すぎだぞ・・・」

時間は朝の6時、寝起きに襲来された。


「待ちきれなくてな、日が出る前から門の前で待っていたんだ。」

「とりあえず中で朝食を食べるか?

それ程早いとまだだろ?」

「それはありがたいがいいのか?」

「今更だな、腹空かせている人を待たせて飯を食べる趣味は無いよ。

用意するから待っていてくれ。」

俺はマックスを部屋に通し、朝食を開始する。


朝食は和食を用意していた。

ご飯に味噌汁、焼き鮭に卵焼きと漬物、そして、納豆だった。

ちなみに納豆はマックスへの抗議も兼ねて用意したのだ。

モーニングアタックの恨みを受けるが良い。


しかし・・・


「うまいな!この豆!ご飯が進む!」

マックスは最初こそ躊躇いを見せたが、直ぐに旨いといい、ガツガツ食べだした。


「マックス、お前本当に貴族か?」

「おう、建国からの歴史ある貴族だぞ。」

「見えんな。」

「そうか?」

「元山賊と言われた方が納得できる。」

「言われた事は、よくあるな。」

「言われてるのかよ!」

「堅苦しいより、いいだろ?戦場にいけばマナーなんて意味ないからな。」

マックスは豪快に笑う。

そんなマックスにリミがおかわりを持ってくる。

「ありがたい・・・ところでヨシノブ、給仕が子供ばかりだが、そういう趣味なのか?」

「ちがうわ!この子達は俺が育ててる子供だよ。

まあ、みんないい子で良く働いてくれるんだけどね。」

言われて気づいたが、今日の給仕は子供達しかいなかった。

「お客様が来たからはりきっているんですよ。

失礼があったらすみません。」

サリナが事情を話してくれる。

どうやら、珍しい来客に子供達も興奮しているのだろう。


「失礼なんてそんな・・・俺の方がマナーが出来ていないので。」

サリナに言われて少ししどろもどろになる。

「あれ?マックスもしかして、女性が苦手か?」

「う、うるさい。奇麗な人を前にしたら緊張するだろ!」

「見た目によらずウブだな。」

「ヨシノブさん、あまりからかってはいけませんよ。」

サリナは俺をたしなめる。

「わかったよ、でもマックスもいい歳だろ?結婚はしてるのか?」

マックスは見たところ30は過ぎているだろう。貴族なら結婚している筈だが・・・


「ま、まだなんだ・・・女性と二人きりで会話なんて・・・」

「いやいや、政略結婚とか色々あるんじゃないか?」

「そんな結婚なんかしたくない!俺はもっと純粋に・・・」

「・・・もしかして、した事ないのか?」

「した事?」

「男女の営みだよ。」

「ヨシノブさん!何を聞いているんですか!」

サリナは顔を赤くして抗議してくる。

「いや、結構大事な話だよ、マックス教えてくれ。」

「・・・無い。」

「えっ?」

「俺は結婚相手に全てを捧げると決めているんだ!その前に汚れるような事ができるか!」

「・・・何処の乙女だよ。そのせいで女の子と話せないんじゃ本末転倒だろ?

そうだ、貴族なら侍女とかいるだろ、話し相手になって貰えばいいじゃないか。」

「いない、我が家では身の回りの事は自分で行い、家人は全て男である。」

「・・・なぁ、そっちの趣味は無いよな?」

俺は少し椅子を下げ距離をとる。


「無い!あくまでも恋愛対象は女だ!」

「宣言するぐらいなら、会話ぐらい出来るようになれよ。」

「何とかしたいのだが・・・」

マックスはでかい肩を落とす。

「そうだ、子供なら緊張しないんじゃないか?」

「子供か?子供なら話せるかも・・・」

「リミ、女の子達を集めてくれないか?このヘタレ貴族の話し相手をしてもらいたい。」

「わかりました、歳の違う子を集めてきます。」

話を聞いていたリミはすぐに子供を集めに向かった。


「ヘタレ言うな・・・」

マックスの抗議は誰の耳にも届かなかった。

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