第289話 帰還

「待てないのよ!!」

シモは提示された時間に納得出来なかった。

「とはいえ、手続きは時間がかかるもので・・・」

「向こうがこちらを喚ぶのに手続きはしておるのか?」

アキラがスサノオに質問をぶつける。

「向こうは・・・してないな。」

「おかしいではないか、向こうがしてない手続きを何故せぬばならん。

そもそも、ワシラが行ってやろうというのだ、文句があるなら呼んでくるがよい。」

アキラから殺気が漏れ出す。


「スサノオ様!ご無事ですか!」

兵士と思われる者達が扉から現れた、スサノオを守るように囲む、そして、銃と思われる筒がアキラ達に向いている。

「やめろ!シモに攻撃をしようとするな!」

スサノオは止めようとするが・・・

その前にアキラが動く。


「ワシとやる気か?」


チン!


アキラの剣がしまわれる音が響くと、兵士の腕が落ちる。


「ぎゃあああ!!」

周囲は悲鳴があふれる。

「仕方ない、やるしかないのか・・・」

リョウも戦闘態勢にうつる。

この世界に来たことで得た力もあったので実験も兼ねてやり合うつもりであった。

しかし・・・


「お前達は下がれ、治療を受けてこい。」

スサノオはため息をつきつつ、兵士に命じる。


「しかし、スサノオ様!」

まだ無傷な者がスサノオを守ろうとするが、

「お前達では勝てん、怪我人を増やすだけだ、それに命の保証も無いからな。」

「よくわかっておるな、どうだ?スサノオとやらもやり合うか?」

「止めておく、お主とやるのは楽しそうではあるが、そこの子供が参入してくるといささか都合が悪い。」

「して、どうする?ワシラは引かんぞ?」

「わかってる、お前達がその気なら許可なんてクソ喰らえだ、そもそも、手続きなんてマドロコシイものなんてどうでもいいんだ、抜け道なんていくらでもあるしな。」

「よいのか?」

「かまわん。俺とて無理を押し通して今があるからな。」

スサノオは豪快に笑う、どうやら当初の態度は取り繕っていただけのようだった。

今の豪快な様子の方が素なのであろう。


「これに乗れ。」

スサノオは一つの舟を出す。

「これはなんじゃ?」

「天鳥船という物だ、これを使えば異世界とて行くことが出来る。

まあ、それ相応の魔力が必要になるが、既に貯めてある。」


「いいのか?」

リョウは再度確認する、手続きを破る以上、スサノオにも罰が下るのでは無いかと不安になるが・・・

「なに、俺は奪われただけだ、何せ神殺しのアキラがいるのだからな。」

スサノオは笑いながら言う。

「恩に着る。」

「リョウ、向こうの神は嫌らしい事をしてくるぞ。くれぐれも気をつけるのだな。」

「わかった、気に留めておくよ。」

「なら、行って来い。」

「おう!」

こうして、シモ達一行は異世界に帰還する・・・


「あーーーー!!間違った!

なんで俺が舟に乗っているんだよ!」

雰囲気に流され、何故かリョウも異世界に渡っていた・・・

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