第242話 ルールと対峙

「ここであったが百年目なのよ、おとうさんを狙う邪悪な物を始末するのよ!」

シモは刀をかざし、ルールに宣言する。


「私が邪悪?失礼な!私は神族のルールです。神様なのですよ!跪きなさい!」

ルールは神力を使い、跪かせようとする。

この力はこの世界の神への信仰心が少しでもあれば、跪いてしまう、極悪な力であった。

鍛冶師のヒビキは自身が祈る、酒の神、ノーノへの信仰心により跪く。


しかし、シモとアキラ、あとカールには聞かない。

シモとカールは幼き頃からの劣悪な境遇により、神を呪い、そこから救ってくれた、ヨシノブとサリナを信仰している為、この世界の神への信仰心など欠片もなかった。

そして、当然のようにアキラにもこの世界の神への信仰心などある筈もなかった。


「何かしたの?」

シモは首をかしげる。

「なっ!おかしいです!何であなたは信仰心がないのですか?」

「信仰心?あるのよ、おとうさんに感謝の気持ちで一杯なのよ。」

「おとうさん?そんな神いたかしら・・・」

「いるのよ、でも、あなたはおとうさんの敵なのよ、だから、斬ってもいいのよ。」

シモは刀を構え、力を溜める。


「そうじゃ、敵は斬らねばならぬ。

いらぬ言葉遊びに惑わされてはならない。

細かい事は斬ってから考えるのじゃ。」

アキラはシモの考えを肯定する。


「いくのよ!」

シモは魔力を爆発させて一気に間合いを詰める。

「は、はやい!障壁!」

ルールは慌てて障壁を張るが・・・

「桐谷流、奥義、椿なのよ!」

シモはアキラの奥義椿を使い、ルールごと障壁を斬り裂くのだった。


「えっ・・・」

ルールは信じられないといった表情を浮かべている。

そして、斬り裂かれたルールは身体が半分になり崩れ落ちる。

「私が、なんで?えっ?」

流石神の端くれ、半分になったぐらいではすぐに死なないようだった。

しかし・・・


「見事じゃ、シモちゃん。」

アキラはシモを褒めつつ、ルールの顔面に自身の刀を刺す。

「ぎゃあぁぁぁぁ!何これ・・・いや、神力を吸わないで・・・わたしが無くなる・・・」

アキラの持つ刀は数多の人間、魔物、果ては神を斬り続けた事で魔剣となり、神ですら喰らう刀へと昇華していたのだった。


「うにゅぅ・・・倒しきれなかったのよ・・・」

シモは悔しそうにしている。

「今はそれで充分じゃ、もっと敵を斬っていけばいずれ辿りつくであろう。」

「がんばるのよ!」

シモはフンスと両手に力を入れて気合を込める。


その瞬間、ルールが絶命したのに合わせて、空間が開かれる。

「くっ、コヤツ時空に関わる神か!」

近くにいたアキラは開かれた空間に吸い込まれそうになっている。

「おじいちゃん、今助けるのよ!」

シモはアキラを引っ張ろうと近付くが・・・

「来てはならん!」

アキラは制止するが時すでに遅し、体格の小さいシモは一気に身体が浮き、空間に飛ばされる。

それをアキラは手で掴むが一気に体勢が崩れる。

「カールよ、ヨシノブに伝えよ、シモはワシが何とかしてみせる。暫し預かっていくとな。」

「アキラさん!」

「カールまで来るなよ、ではさらばじゃ!」

アキラはシモを抱えるようにして空間に呑み込まれていった。


二人を呑み込んだ空間は閉じられ、あった筈のルールの死体も姿を消しているのだった・・・

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