第229話 タケフミの帰還

一方、置いていかれたタケフミは・・・


ユカリ達が去ったあと、1時間程してスーツを着た人達が現れる。

「君がタケフミくんかね?」

「はい・・・」

「私は政府から来た加持というものだ、今後の君の相談役と言う訳だ、それ程緊張しなくていいよ。」

加持は名刺を渡し、自己紹介をする。


「政府の方ですか?」

「そうだよ、ところでもう一人いる筈なのだが?」

加持は周囲を確認するが、

「それなら家族が迎えに来てましたが。」

「ふむ、何故ここを知っているのか?

まあ、その辺は後で確認するとして、タケフミくんには今後の話もあるから来てくれかな?」

「はい。」

タケフミはこうして政府と対話する事になる。


「タケフミくん、君はポーションを知っているかね?」

「ポーションですか?知ってます。」

「なら使ったことは?」

「あります。手足が無くなった時もそれで治しました。」

「おお、それは凄い、それでそのポーションを手に入れる事が出来るかね?」

「い、いや、この世界では無理かな・・・向こうにしかないし、ヨシノブに頼むしか。」

加持はヨシノブと呼び捨てにした事を聞き逃さなかった。

つまり、キーマンたるヨシノブを呼び捨てにするぐらいに仲が良かったのだと。


「異世界と連絡はとれるのだよね?」

タケフミはマイがいる事を考えて電話が出来ると思う。

「ええ、たぶん出来ますね。連絡出来るタイミングがありますけど。」

「そうか、それは素晴らしい。実は君に頼みたい事があるんだ。」


「何でしょうか?」

「ポーションの輸入をお願いしたいのだが?」

「輸入ですか?」

「そうだ、この世界に無いポーションには様々な可能性がある、それの輸入を頼みたい。」

「しかし、できるかな・・・」


「君なら出来る!もっと自信を持つんだ。

それに君に報酬も用意する。

専属契約で年一千万用意した。」

加持はトランクに入れて置いてあった一千万円を見せる。


「なっ!」

「もちろん、ポーションの費用は別に支払う。値段は要相談になるが、効果次第でそれなりの値段で買い取る事は約束出来る。」


タケフミはマイに送らせるだけで一千万プラスアルファで入る皮算用に目を輝かせる。

ちょっと電話するだけのボロ儲けじゃないか。


「わかりました、ポーションの輸入、引き受けます!」

「おお、ありがたい、こちらの契約書に署名を頼む。」

タケフミは契約書に名前を書く。

「くれぐれも他には売らないでくれよ。

違約には契約の3倍を請求するからね。」


「もちろんです。それよりこのお金は・・・」

「持ち帰ってくれて構わない。」

「ありがとうございます。」

「これはビジネスだからね、ただ、ポーションをちゃんと渡してくれよ。」


タケフミは一千万円を持って、加持が用意した車で家に送ってもらったのだった。


家に帰ると両親が出迎えてくれる。

「タケフミ・・・タケフミなのか?」

「ああ、俺だよ。」

「いや、しかし見た目が・・・」

「向こうで色々あったんだよ、それより疲れたから寝るわ。」

タケフミは困惑する両親を放置して、自室に入り、ベッドに転がる。


「さて、この金で何を買おう。」

頭の中にあったのは一千万円の使い方だけだった・・・

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