第226話 帰還

「ユカリ元気でね。」

カエデは泣きそうになりながら見送っている。


「カエデ、マイ、ミキ先に帰るけど、ずっと待ってるからね。」

「うん、私達もいつか帰るから、その時までに異世界騒動終わらしといてよ。」

ミキは涙を浮かべているが、軽口を叩き、普段のようにしようとしていた。

「もう、ミキ、プレッシャー与えないでよね。」

「ユカリ〜」

マイは泣きながら抱きつき、別れを惜しむ。

「マイ、きっとすぐに会えるよ、ミキが言うとおり、騒動を片付けて待ってるからね。」

四人はタケフミが来る間別れを惜しんていた。


「力の足りぬ、我のせいで・・・」

天照大神は悔しそうな表情を浮かべている。

「アマテラス様のせいではありません。」

俺は天照大神を慰めつつ話しかけていた。


「しかしだな・・・そうだ、お主に我の加護を与えよう。」

「えっ、しかし、私はこの地の神トートから加護をもらっておりますが?」

「複数あっても困るまい、この地の神は些か無能が多いからな、何かあってはいかん。」

「・・・それ程酷いのですか?」

「うむ、駄目だな、一部しか働いておらん。

もしくは働いてもマイナスにしかならん者が多い。」

「そうですか。わかりました、どうか私めに加護をお授けくださいませ。」

「うむ、天照大神の名において、汝ヨシノブに我の加護を与えん。」

天照大神が光り輝き、俺の身体に光が吸収されていく。

「これは?」

「我の加護が馴染むまでは使いづらいかも知れんが必ず力になるであろう。

さて、もう一人も来たようだ。

帰還の儀を執り行うかな。」

アマテラスの言葉に俺はタケフミに縁の深い二人に確認する。


「ショウくん、マイちゃん別れはいいかい?」

「・・・はい。」

「お兄ちゃん、元気で頑張って・・・」

ショウとマイは複雑な思いのようだったが、簡素な別れを告げる。


「なあ、ヨシノブさん、俺が帰ったら保護して貰えるように頼んでくれないか?」

「自衛隊の山本さんには頼んである、何かあれば頼ったらいいよ。」

「それは絶対だよな!」

「絶対なんてないからな、何処まで保護してくれるかは政府次第になると思う。」

「そんな・・・」


「アマテラス様、この二人は日本の何処に着くのですか?」

「伊勢神宮である、あの地が我の加護が強いでな。」

「そうですか。」

俺は山本にメールを送る、急ぎ保護して貰えるように手配してもらう。


「では、参る。」

アマテラスは聞き取れない言葉の呪文を唱え始めるとユカリとタケフミの足元に魔法陣が現れる。

「ヨシノブさん、ありがとうございました。

おかげで私は無事に帰れます。

このご恩、生涯忘れません。」

ユカリは涙を流しつつ、深く頭を下げ、俺に御礼を述べる。


「ヨシノブ、絶対に保護するように連絡しとけよ!絶対だからな!」

タケフミは最後まで自分の事だった。


「二人共、元気で。」

俺の言葉を最後に二人の姿はアマテラスと共に消えたのだった。

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