第217話 仇討ち

「僕の剣が!!返せ!この泥棒!」

「気付かない方が悪いのよ、だいたいシモのお尻を見る目が気持ち悪いのよ。」

シモの指摘の通り、お茶を入れた後、シモが聖剣を持っていったのに、ツバサはシモのお尻を眺めて気付いていなかった。


「ツバサくん、シモは無いだろ・・・」

俺は思わず呆れてしまう。

「ち、ちがう!僕はそんなことしていない!」


「シモちょっと来て。」

俺はシモを呼び寄せる。

「なに?呼ばれたのよ♪」

ツバサと会話していた冷たさは無くなり、嬉しそうにやって来る。

ちなみに踏んでいた聖剣はオットーが即座に確保する。


俺はシモのスカートを少しめくってみる。

すると、ツバサの視線はシモのスカートを凝視していた。

「アウトだね、ツバサくん君はロリコンだったのか?」

「ち、ちがう!僕はロリコンなんかじゃない!

ロリロリしたのが好きなだけだ!」


「・・・それをロリコンというのでは?」

「ちがう!ちがう!ちがう!そもそも、幼女のスカートをめくる、お前のお方がヤバいじゃないか!」

「いや、だって子供だぞ?」

俺が頭を撫でると嬉しそうに頭を摺り寄せてくる。


「何を言っている!10歳ぐらいの美少女のスカートをめくるなんて犯罪に決まっている。

Yesロリコン、Noタッチの紳士協定に反している!」


「なんだそれ?」

「知らないのか!」

「知るか、そもそも子供に欲情するわけ無いだろ?」


「美少女は別だ、見てみろ、

美しい腰まである銀髪の美しさ、天上の者とも思える整った天使の顔立ち、そして、発育途上の身体はまだ何者にも染められていない穢れない純粋さを持つ。

どうだ、これでも意識しないか?」

俺は再度シモを見る。


「おとうさん、見つめられると恥ずかしいのよ。」

「うーむ、どう見てもシモだな。」

「シモなのよ?」

「良さがわからないのか!」

「いや、可愛いとは思うけど、そんな目では見ないな。」

俺はシモの頭を撫でている。

「気持ちいいのよ~」

シモは嬉しそうに俺にギューッと抱きついてくる。


「あーーー僕の天使がぁ!!!」

ツバサは魂の咆哮をあげる。


「誰がお前の天使だ、シモはシモだぞ。」

「シモはおとうさんの娘なのよ。」

「くっ!このロリコンめ!紳士協定を破るお前に生きる資格は無い!」


「・・・何で俺の生存権の話になっているんだ?」


「一線を越えたロリコンに生きる資格が無いのは全世界共通だ!

たとえ世界が許しても僕が許さん!

覚悟しろ!」


「まあいい、脱線したけど、敵対するなら丁度いいかな?」


「い、いや、ちょ、ちょっと敵対だなんてそんなつもりじゃなくて・・・」

ツバサの勢いが急激に弱くなる。


「ツバサくんのつもりなんて知らない、君にはしてきた事の責任をとってもらうよ。」


「僕のしてきた事・・・?」

「はぁ、さっきも言った通り、ウメさんにしたことは許せない。

覚悟してもらう。」

「ど、どうするつもりだよ・・・」

「俺が裁きを下してもいいんだけど・・・マツさん。」


マツは話が終わるまで待っていてくれた。

「もうよろしいのですか?」

「ええ、不死でもないようですので、始末しても大丈夫です。」

「ま、待て!俺はその人に引き渡されるのか?」

ツバサはマツの美しい姿を見て、唾を飲む。


ロリコンと思っていたが、どうやら守備範囲は広いようだ。


「こんな状況でも欲情しますか、つくづく救いのない男ですね。

父の仇です。

討たせてもらいます。」

マツは短剣を抜く、


丸腰のツバサは勇者として多少上がっていた身体能力を使い逃走しようとするが、立ち上がり後ろを見せた瞬間・・・

シモが両足を撃ち抜く。


「逃がさないのよ。」

「ぐわっ!」

ツバサは床に倒れ込み・・・

「父の仇!」

マツが倒れたツバサの上に背中から腹の辺りを刺す。


「い、いたい、いたい!止めろ!離せ!離してくれ!」

しかし、マツが逃がす事はない、更に深く短剣を刺し込む。

「や、止めろって言ってるだろ!俺が死ぬ、死んじゃうんだよ!」

「さっさと死ね!」

「や、やだ!死にたくない、僕はこんな所で死ぬなんて嫌だ!た、助けてよ!誰か!ヨシノブ!同じ日本人だろ!助けろよ!」


マツの力が弱いのか、勇者として身体能力が高くなっている為か、簡単に剣が入っていかないようだった。


「マツさん、手を貸そうか?」

「いえ!これは私の仇討ちです!手出し無用でお願いします!」


「くそっ!何で俺がこんな目に会わなければいけないんだ!」

ツバサは刺されながらも体勢を変えて、マツを振り払う。


「きゃぁ!!」

「くそが!俺を刺すなんて許せない!」

ツバサは刺さっていた剣を抜き、マツに斬りかかろうとするが・・・

俺が剣を持った右腕を撃ち抜く。

「ぎゃあぁぁぁぁ!何で日本人を撃つんだよ!」

「俺はマツさんの味方だからな。」

「こ、こんな事して訴えるからな!」

「・・・何処へ?」

「へっ?」

「この異世界で何処の誰に訴えるつもりだ?」

「いや・・・」

「たとえ俺が君を殺しても裁く相手はいない世界だ。」


「じ、じいさん!勇者なんだろ?同じ日本人の子供が殺されそうになっているんだ、助けてくれよ。」

俺が助ける気が無いとようやく気付いたのか俺を諦め、アキラの説得に入るが・・・


「なんじゃ、日本男児たるもの、危機を自分で乗り越えるのは当たり前じゃろ?」

「そんな事をいわずに!」

「武が足りず、倒れたならば潔く死するも日本男児の道である。

敵の手にかかる前に、

男らしく腹を切れ、

介錯ぐらいはしてやろう。」


アキラはマツから奪い取った短剣を見ながら腹を切れといってくる始末だった。

「腹を切るなんて出来る筈が無い!」

「情けない、腹の一つも切れんとは。」

アキラはやれやれと言った表情をしている。


「いや、現代人に腹は切れない・・・いえ、なんでもないであります。」

俺はアキラに突っ込みをしようとして止めた、危険だと本能が告げていた。


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