第214話 アキラに出会う。

俺達が城に近付いた時、一人の老人が立っていた。

「何者だ!」

パウルが警戒しながら問いかける。

全員が銃口を向けていた。


「なんじゃ?この世界に銃じゃと?しかも、子供が?わからんのぅ・・・


ワシは桐谷アキラ、歯向かうなら容赦はせん、お前らは何者じゃ?」

アキラは何時でも斬りかかれるように警戒しつつも対話を求める。


「桐谷アキラ・・・リョウの爺さんか!全員銃をおろせ、敵意を見せるな!」

俺は慌てて、子供達に銃をおろさせた。


「アキラさん、お久しぶりです。」

「お前は・・・リョウの友達じゃったか?

珍しく普通の人間じゃったから印象に残っておったが・・・」

アキラは俺の高校の友人、桐谷リョウの祖父だった。

異常な剣の腕前の持ち主で世界最強と言われていた。

俺も一度、練習に付き合わされたが、全く見えない剣を相手にどうしろと、当時は泣き言を言った気がする。


「はい、リョウの友人のヨシノブと言います。」

「そうか、普通と思っておったがこちらに来ているということは普通でもないのだな。」

「アキラさんはここが何処か知っているのですか?」

アキラの落ち着いた様子を不思議に思う。


「異世界であろう?昔来たことがある。」

「えっ?」

「若い頃にな魔王とか言っていきがっておった者を始末したのじゃ。」

「そうですか、ならアキラさんは勇者だったんですね。」

「いや、勇者は友人のイゾウという奴だった、まあ、自身は剣聖とか名乗っておったが。」

「じゃあ、アキラさんは?」

「巻き込まれた一般人だな、ワシはイゾウの奴が掴みおった為に連れてこられたのだ。」


「・・・じゃあ、その強さは?」

「修行の成果に決まっておろう。男児たるもの剣に生き剣に死す、ただそれだけじゃ。」

「そ、そうでしたか、しかし、こちらに来てしまって、心中お察しします。」


「・・・何を言っておる?」

「ですから、帰る術が?」

「いくらかあろう?神を斬って、その血で道を開くもよし、魔王を血祭りにして道を開く、四竜と四獣を始末し、祭壇に捧げる。

ほら、三つもある。」

全てが血生臭い道であった。


「それで道が出来るのですか?」


「うむ、以前来た時、キーキという奴が言っておったわい。」


「アキラさんは以前どのようにして帰国なされたのですか?やはり魔王を倒して・・・」


「魔王は倒したが、ワシとイゾウを拐った奴にケジメをつけるために神界に殴り込んでキーキの首をはねたら、日本に送り返されたわい。」

アキラは笑っていた。


「・・・神界に行けるのですか?」

「イゾウの力でな。

じゃが今回はイゾウがおらんでのう、魔王の首をはねるのが一番早いか。」

「魔王ですか?」

「うむ、ワシを呼んだのはたぶん其処に転がっておる男だ、じゃがこの男は剣しか取り柄がなさそうだったでな、召喚魔法を使った者は他におるはず、だが、異世界転移を成功させる魔法を使えるものなど、魔王ぐらいしかおるまい。」

「それでは、魔王が見つかるまでは私達の所で暮らしてみては?幸い、日本の設備を呼び出せますので生活は楽かと。」


「それは助かるわい、米や味噌もあるんだろうな?」

「もちろんです。」

「ならば厄介になる。じゃがその前に・・・」

アキラは城を見る。


「不穏な気配がある城だ、調べておこう。」

俺達はアキラと共に城の中に向かうのだった。

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