第184話 ウメ・・・

ツバサに手折られた後、ウメは周囲に何も言えずただ耐えていた、この村では貞操観念は非常に高く、嫁入り前に純潔を失う事を恥とされていた。

ウメは気丈に振る舞いつつも、人のいないところでは涙を流していたのだった。


そんなウメをみながらもツバサは周囲に普通に接している。

村人達はトートの使徒ということもあり、皆好意的に受け入れていた。


そんな姿がウメの心を傷つける。

まるで村人と距離が出来たように感じるのだった。


そして、ウメが言えない事をいいことにツバサは次の日も、またその次の日もウメを抱くのであった・・・

最初は痛いだけだった行為に感じ始めた時、ウメの心は限界を越えた・・・


「先立つ不幸をお許しください・・・」

ウメは遺書を書き、滝から身を投げたのであった・・・

そこには両親への感謝のみを書いていた。

体を汚された事を最後まで書けなかったのである・・・


それを見たユキムラは何故身投げをしたかわからず困惑するが、すぐに捜索隊を結成して探すも、ウメの姿は何処にも無かったのだった・・・


「おとうさん、落ちてたのよ。」

ある日、シモや子供達を連れて川に遊びに(子供達は訓練のつもり)行くとシモが川から女の子を拾ってきた。

「落ちてたって・・・おい、大丈夫か?」

女の子は意識が無い、俺はあわてて救急治療を行う、服を脱がしAEDを使用したところで息を吹き替えした。


「ここは・・・」

「大丈夫か?」

「私は死ねたのかな?」

「生きてる、死んでない、だからしっかりしろ!」

「生きてるの?・・・なんで、なんで死ねないの・・・」

女の子は息を吹き替えしてから号泣するのであった。


それから暫くは様子を見ながら落ち着くのを待ってから話を聞く。

女の子はウメといって、14歳の女の子だった。

ウメは以前に来ていた日本人が作った村の出身という話だったので、俺も日本人だと伝えると目を丸くしていた。


「此処には他にも日本人がいるから。」

「そんなにいるんですか?一時代に一人だけでは?」

「巻き込まれて来た人が結構いるんだ、その人は受付じゃないや、神様にあってないみたいなんだ。」

「トート様に会った方がおられるのですか!」

「トート?俺は会ったよ。俺の力はトートさんに貰ったんだ。」


「それじゃツバサ様は?」

「ツバサ?それって勇者のツバサかい?」

「はい、勇者と名乗ってました。」

「彼はトートさんに会って無いはずだよ、彼が召喚された事をトートさんは知らなかったみたいだし。」

「じゃあ、私は・・・」

ウメは身体を大きく震わせる。


「ウメさん!落ち着いて、どうしたの!」

「わたし、わたし、いったい何の為に身体を汚されて・・・耐えたの・・・」

「汚された・・・ってまさか。」

俺は言葉を失う、話の流れからしてツバサが彼女をレイプしたのであろう事は理解出来た。


「お願いです。汚れてしまった、私をどうかトート様の元に送ってください。

もう一度死ぬ勇気が出ないんです。

お願いします・・・」

「ウメさん、君は汚れてなんかいない!もっと自分を大事にするんだ!」

「・・・でも、私の中に汚らわしい物が・・・」

「そんなの気にすることはない、君の美しさはそんな事で失う事ではないよ。」

俺とウメは見つめ合う・・・


「おとうさん、そこまでなのよ。

女の子の事は女の子に任せるべきなのよ。」


「シモ、そうだな、じゃあサリナに・・・」

「違うのよ、専門家に任せるのよ。」

「専門家?」

「少し待つのよ。」

暫くしてやってきたのはミキだった・・・

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