第171話 裏切り者へ

「ショウ兄、行きたい所があるんだ連れてってよ。」

ショウに話しかけて来たのはパウルであった。

「うん?どうした?何処に行きたいんだ?」

「マインズ王国に行きたくて、たのめないかな?」

「ヨシノブさんは知ってるのか?」

「ショウ兄の護衛ならいつも一緒にいってるから問題無いよね?」

パウルから不穏な気配がする。


「パウル、何をしようとしてるか話してくれるかい?」

「・・・裏切り者を始末するんだ。」

パウルの目から光が消える。


「裏切りって誰が?」

「マルコスと言うゴミだよ、おとうさんの寛大な処置に不満を持ったようでね。

今回の戦争の引き金の一人なんだ。」

「ま、まて、それこそヨシノブさんに知らせるべき話だ、ちゃんと報告してからにしよう。」

ショウは必死に説得して、ヨシノブの所に連れていく。


「マルコスが裏切っていたのかい?」

「はい、会計に不審な所があったので、盗聴記録を調べた所、カクタスと内通していた事が判明しました。」

「そうか・・・フィリアを呼んでくれ。」


フィリアも呼ばれるが縄で縛られ、シモに銃口を突き付けられていた。

「シモ、銃を下ろしなさい。」

「裏切り者の子供は裏切り者なのよ。

おとうさんの前に立つ資格も無いのよ。」

「いいから、シモは俺の膝に座っていいから。」

シモは銃を下ろし、迷わず俺の膝に座る。


「フィリア、怪しい真似をしたらパウルが撃つのよ、覚悟してしゃべるべきなのよ。」

「は、はい。」

シモに脅されたせいか、大きく震えていた。


「フィリアはマルコスの裏切りを知っていたのかい?」

「し、しらない!ヨシノブさんを裏切るなんてそんな真似を私が許す訳がないわ!」

必死に弁明する。


「その様子なら知らなかった事は嘘じゃないんだろうな、それでどうする?

マルコスに制裁することは決定している。

問題は何処まで制裁の対象にするかだが・・・」

「・・・おとうさんだけでお願いします。

お兄ちゃんもお母さんもきっと知らないと思うの。」

俺はパウルに目配せをして確認すると、本当に家族は知らないようだった。


「なら、選択肢をあげることになるかな、マルコスについて行くか、行かないかだな。

フィリアも店に着くまでに答えを見つけておいて。」

「店に着くまでって・・・」

「この件は俺が出向くよ、基地の事はサリナに任せるよ。」


こうして俺はシモとパウル、オットー、あと故郷に行ってみたいと熱心に言ってきた20名の子供を連れてマインズ王国のマルコスの店にやって来ていた。

店にはフィリアとシモ、オットー、パウルが護衛としてついて来ていた。


「これはヨシノブさん、ようこそお越しくださいました。

おお、フィリアも来たんだね。」

「マルコス、聞きたい事があってきた、奥さんと子供も呼んでくれるか?」


「不躾ですな、少しぐらい親子の再会を楽しませてくれてもいいじゃないですか?」

マルコスは不機嫌な表情をみせる。


「それは後だ、それより早くしろ。」

「おとうさん、お願い、これ以上怒らせないで・・・」

フィリアは泣きそうな顔をしながら頼む、


「わかった、わかりましたよ、呼んできますから奥の部屋にどうぞ。」

マルコスは少し乱暴な言葉遣いで家族を呼びに行った。


「おとうさん、もういいのでは?」

パウルは銃を用意している。

「まだ、待ちなさい、一応話を聞こう。」

俺達も奥の部屋に向かった。

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