第164話 ローラン王国、名将ナタル

「あの町を落とせば良かったのだな。」

ローラン王国は名将と名高いナタルが総大将として軍を率いていた。


「そうですなぁ。カクタス侯爵の話によるとあの町を落とし、後は交渉にて停戦するとの事ですね。」

「・・・ふぅ、茶番だな。

ワシは政治に関わってきてはおらんがこのような事で、戦争になるとは。」

「ナタル殿、お気持ち察します。

しかし、我が国は現在未曾有の危機に陥っております。

ナタル殿の名と引き換えにマルドラド貴族から裏で援助を頂くのです。

ここは辛抱を。」


ローラン王国は名将ナタルを負けさせる代わりに多額の資金、食糧を得る約束をしていた。


マルドラド貴族の中でも裕福な者達が名誉を得るために名将の敗北を要求していたのだ。


「わかっておる。

ワシの名前などどうでもよい。

だがな、罪の無い住人が被害に合うと思えば心も痛もう。」

「ですから、降伏の使者を出したのです。

相手もこの大軍を見れば、降伏するでしょう。」


そこに伝令が走ってきた。

「報告申し上げます。」

「なんだ?」

「はっ!使者が戻ってまいりまして、敵、交戦を望むとの事にございます。

なお、我等の姿を相手が見た時が開戦の合図との事です。」


ナタルは頭を抱える。

「愚かな・・・数もわからぬ奴が領主をしておるのか。」

「ナタル殿、致し方ありません。

ここは素早く落とし住人の被害を押さえましょう。」

「是非も無し・・・

皆に告げよ、抵抗しない者に危害を加える事は許さん。

良いか、敵兵士のみを始末するのだ。」


ナタルは全軍に指示し、無益な被害を出さないよう徹底する。

そして、町が見える位置に布陣する。


「開戦の使者を送れ。もし、降伏を望むなら受け入れる事も伝えよ。」

ナタルは最後まで降伏してくる事を願っていた。


「勝手におうちに入りこんだ人は泥棒なのよ。

家族の命を狙う者は殺人鬼なのよ。

そんなの子供でも知ってることなのよ。

あなた達はおとうさん、おかあさんの命を狙う殺人鬼で私たちのおうちを狙う泥棒で・・・つまり悪党なのよ!

そんなやつは生きる価値なんてないのよ。

全員、攻撃開始なのよ。」

シモの開戦の言葉が響き渡る。


「ぬぅ、幼子に言われるとは・・・

国の為とはいえ、少し心にくるものがあるな。」

「ナタル殿?」

「いや、大丈夫だ。良いか、子供もいるようだ、くれぐれも傷つけぬ・・・何の音だ?」

迫撃砲の飛来音が聞こえたかと思うと前線が大爆発を起こした。


「何事だ!」

ナタルは現状を把握しようとする。

「わかりません!魔法は感知されませんでした。」

副官達は混乱に陥っていた。

「落ち着け!我等が乱れると全軍に響く。

両翼を広く布陣し、攻撃させよ。中央を少し下げるのだ。

魔術師達は前方に防壁を張れ!

竜騎士も全員飛び立たせよ。

上空より制圧に向かわせろ。」

「はっ!」

ナタルは命令を発布、爆発をかわし攻撃を仕掛けようとする。


しかし、それは無駄に終る・・・

命令を発布して直ぐにショウが放ったミサイルがナタルの上に落ちてきたのだ。

「なっ!くそったれ!」

ナタルはミサイルを咄嗟に盾で防ぐもミサイルは爆発、跡形も無く消し飛ぶのだった。


開戦して直ぐに総大将が本陣ごと討ち取られたのだ、

これにより戦場は大混乱に陥るのであった。

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