第141話 パーティー

「シャルル様、お招きありがとうございます。

私がショウの上司のヨシノブと言います。」

「あら、随分お若い方なのですね?商会のトップというからもう少しお歳を召されているのかと勝手に思ってましたわ。」

「若さの為に、経験が不足してますから、パーティーの無作法は御容赦願いたいですね。」

「構いませんよ、人族と違い、あまりマナーにうるさくないのが魔族のあり方ですので。」


「それは幸いですな。」

「ゆっくり楽しんでくださいね。」

シャルルと挨拶をかわした後、俺は各当主の元に挨拶に回る、

事前に参加者に贈り物をしていたお陰でほとんどの物が友好的だった。


中でも一番警戒していた魔族の中でも最強の武闘派と聞いていた、フォルサ公爵に贈った酒、ウイスキーをフォルサが気に入り、フレンドリーに話しかけてくる、

「ヨシノブ、あの酒はなんなんだ?」

「あれは私の故郷の酒でして、現在私のスキルで取り寄せる事しか出来ない物なのです。」


「お前のスキルだと?ならお前が死ねば?」

「取り寄せられませんね、人族の街に多少なら流通してますから、暫くは飲めるかも知れませんが。」

「駄目だ駄目だ、そんなのすぐに無くなるじゃねぇか!ウワバミのドワーフどもが群がって飲みきるに決まってやがる!

なあ、魔族領でも流通させれねえか?」


「ですが、こちらでは人族があまりいい扱いを受けないと聞きますので、流通は難しいかと・・・」

「ふむ、ならば、俺がお前の下に信用出来る者を送るから、そいつを使って何とかならんか?」

「フォルサ殿が・・・」

「フォルサで構わん。」

「えっ?」

「お前とは仲良くしておきたいからな、対等で話そうじゃねえか。」

「それならフォルサ、貴方が信用出来ても、私達が信用出来るかは別の話しかと。」

「確かにそうだな、だが言い始めてもキリがねえだろ?取り敢えず人を送るからそれで信用出来るか、確めてくれ。」

「わかりました、じゃあ一先ずお預かりします。」

「おう!お前が気に入るような人選をしておくさ!」

フォルサは上機嫌になっていた。

そして、調査の話しもそのまま受けてくれ、後日渡す家紋入りの旗を持っていればフォルサの庇護下にあり、フォルサ領内では襲われないと誓ってくれた。


しかし、一人だけ面白くなさそうにしている物がいた。

魔族公爵のアホガンテであった。


「ふん、人族ごときが生意気な物よ、シャルルの宴で我が物顔で動くとはな。」

取り巻きの魔族も追従する。

「さようにございます、見ればろくに魔力も無いような脆弱性な輩、シャルル様が気にかけるような者では無いと思いますね。」

「そうであろう。よし、力の差を見せつけてやろう。」


アホガンテはヨシノブの前にやってくる。

「脆弱な者よ、何故私に挨拶に来ん!」

「これは失礼を致しました、お会いする方から挨拶をしておりましたので、遅れた事をお詫びいたします。」

「人風情が、頭が高いわ!まずは跪かんか!」

アホガンテはヨシノブの膝を魔法で生み出した衝撃波で破壊する。

「ぐっ!いきなり何を・・・」

俺は膝を砕かれ、地面に伏す。

「ふん、身の程を知れ、このゴミが!」


「ヨシノブ!貴様我が友に何をしてくれる!」

フォルサはアホガンテに抗議をいれる。

「フォルサ、これは俺とこのゴミとの争いだ、関わるな!」

しかし、アホガンテはフォルサを静止する。

フォルサとしても、シャルルの宴で暴れる事に躊躇いがあった為、攻撃にうつれない。


少し遅れてシャルルが抗議を入れる。

「アホガンテ!私の宴で何をする!」

騒動にシャルルの声が響く!

「シャルル、貴女はまだお若いから魔族の品位を解っておらんのです。

人など我等に跪き這いつくばって話す存在なのですよ。」

「貴様、私の客人を傷付けその物言い、私に対する宣戦布告と取るぞ!」


「構いませんなぁ、私に勝てるとでも?

ああ、私が勝ったあかつきには貴女を妾として置いてあげましょう。」

アホガンテはシャルルの身体をなめ回すように見る、

「き、気持ちわる!」

シャルルは鳥肌が立つ、実際、戦力はアホガンテの方が高くシャルルが勝てる可能性は低かった。


現在、理由無き戦争は魔王の命令で禁止されている。

しかし、抜け道はあるもので、互いの面子を潰し合い、互いに理由を作ってからの戦争は行われていた。

アホガンテの狙いは難癖をつけてシャルルが戦争に踏み込み、勝利する事でシャルルを手に入れるつもりだった。


アホガンテは狙い通りの展開になり高笑いするのであった。

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