第121話 指輪を渡す

ヒビキが指輪を持ってくる。


「ヨシノブ、ほら頼まれていた物だ。」

「ありがとうございます。」

俺は立派な木の箱に入った指輪を確認する。

それは鈍い金色をしていた、

「これは金ですか?」

ヒビキはニヤリと笑い、

「いや、オリハルコンだ。」

「オ、オリハルコン!」

その名の響きに驚きに驚きを隠せない。

「おっ、知っておるのか?」

「い、いえ、名前しか知りませんが・・・」

「ふむ、オリハルコンはこの世で最高の強度を持つ、普通の者では加工等不可能な物質だ。

指輪にするのは初めてだったが良くできておるだろう。」

「はい、見事な出来ですね。」

「しかも、それだけではない、これにはエルフ秘伝の魔法陣が刻まれておってな、持つ者の身に危険が及ぶと結界を張るようになっておる。」

「あ、ありがとうございます。此処までの物を仕上げていただけるとは・・・」

「構わん、ワシも礼を貰っておるしの。」

ヒビキは嬉しそうに酒瓶を上げる。


俺は更に百本、色んな銘柄の酒をヒビキに贈った。

「も、貰いすぎじゃ!」

「いえ、まだ足りないぐらいですが、これ以上は保管に困ると思いまして。」

「わ、わかった、ヨシノブからの気持ちとして受け取ろう。」

「ありがとうございます。」


俺はヒビキと別れた後、サリナに会いに行く。

「サリナ、今、いいかな?」

「いいですよ。」

部屋に入るとシモがベッドで寝ていた。


「あれ、シモもいるの?」

「はい、シモは甘えん坊ですから、時々私の部屋に来てお話をせがむんです。」

よく見るとサリナの横に日本で売られている絵本が置かれていた。

「それ、売店にあったやつ?」

「はい、シモが読んでと持ってきたんです。」

「そうか。」

俺は寝ているシモの頭を撫でる。


「それで、何の御用ですか?」

「あ、いや、その・・・」

俺はシモがいた為に渡すか迷ったが、隠すような事でもないし、シモは寝てるようなので・・・


「サリナ、これを受け取って欲しい。」

俺は指輪を差し出す。

「これは・・・」

「この世界ではどうか知らないが、俺の世界では婚約者に指輪を贈る習慣があるんだ。

少し遅くなったが受け取ってくれないか?」


サリナは瞳に涙を貯め・・・

「嬉しい!ヨシノブさん!」

俺に抱きついてきた。

「サリナ。」

俺とサリナは抱きしめあい、口づけをかわす。


「ううん・・・おはよなのよ・・・」

シモの声が聞こえ、俺とサリナは慌てて離れる!

「お、おはよ、シモ。」

「おとうさんとおかあさん・・・顔赤い・・・ハッ!ごめんなのよ!すぐベッドをあけるのよ!」

シモは慌ててベッドから飛び降りる。

だが、まだ少し寝惚けていた為、転倒しそうになった。


「危ない。」

俺はシモを支える。

「ご、ごめんなさいなのよ、シモは邪魔する気はなかったのよ~~~!!」

シモは慌てて部屋から出ていった。


普段のんびりしているシモの慌てぶりに思わず可笑しくなり、サリナと二人で笑っていた。

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