第111話 フィリアの要求から・・・

基地に戻った俺が一人でいる時にフィリアは話しかけてきた。

「ヨシノブさん、もっと商品の輸送量を増やして欲しいのですが・・・」

「うん?ショウくんが送っている分じゃ足りないのかい?」

「ええ、少し足りないかと、出来れば、もう少し、いやもっと多く・・・」


「ダメです。」

フィリアが頼み込もうとしていたところをサリナが止める。

「サリナさん、子供達の食事を用意してたのでは・・・」

「フィリアさんがヨシノブさんに近付いてるって、子供達が教えてくれたんです。

それより、何ですか、ヨシノブさんが決めた量に不満があるのですか?」


「え、えーと、マインズ王国の人達だけじゃなくて、他国からも買いに来ている人がいるから・・・」

「それは店主の裁量でしょう。

今でもショウくんは沢山運んでますよ。

考えもなく手広く広げたツケは自分達で取ってください。」

フィリアはすがるように俺を見るが、俺はサリナに従うのだった。


そもそも、マルコス店にはかなりの量を運んでいる。

往復の頻度も高かった。

かなりの売上になっているはずなのだが・・・

「なぁ、フィリアさん、マルコスさんは何で船を持って此処と交易というか、輸送をしないんだ?」

「えっ?」

「売上はあるだろ?追加分が欲しいなら取りに来ればいいじゃないか?」

「それは・・・」


いいよどむフィリアの代わりにサリナが答えてくれた。

「ヨシノブさん、彼等は甘えているのですよ。

何せ、ヨシノブさんに任せておけば安全に商品が手に入りますからね。」

「い、いや、そんなことはないのよ!

ただ、雑貨屋のうちじゃ船を使っての交易なんてやったことないし・・・

リスクが・・・」

「それを甘えだと言うのです!

だいたい、ショウくんが運ぶ分でも充分なはずです。

それ以上を求めるなら、自分達で何とかしようとしなさい!」

「な、なによ!私は輸送量を増やしてもらうために此処に来たのよ。」

「なら、帰ってください。」

「いやよ、そもそも何でサリナさんが口を挟むのよ!」

今度はサリナがいいよどむ、そして、俺の方をチラチラ見てくる。


「あーサリナさんは俺にとって・・・」

「フィリア、おかあさんに何を言うの、謝って。」

俺が答える前に、

シモがフィリアに怒っていた。

「シモちゃん、あなたに関係ないでしょう。

私は今大事な話を・・・」

「子供は勉強しなきゃダメなのよ。

フィリアはすぐサボるからダメなのよ。」

「ちょっと、引っ張らないで!私は子供じゃなくて!」

「子供なのよ、おとう・・・ヨシノブさんの相手はおかあさんがするのよ。」

「ちょっと、何、この力、ちょっと離してよ!」

フィリアはシモに訓練場に連れていかれた。


「サリナさん、シモってあんなに強かったっけ?」

「栄養ある食事を取っていたら、子供達みんな体が強くなってますよ。」

「そ、そうなんだ・・・」

思わぬ情報に俺は驚くのだった。


驚いていた俺の手をサリナは握る。

「それより、ヨシノブさんにとって私は何なのでしょう?

答えが聞きたいです。」


シモの登場で雰囲気は壊れていたが、真剣な表情で俺を見つめてくる・・・


俺は改めて自分の心を見つめ直す。

この世界に来てからずっとサリナと一緒にいた。

今更離れて暮らすなんて考えられないし、

サリナを他の男に渡す気なんて無かった。


そして、俺は真剣サリナの瞳を見つめて・・・


「・・・サリナさん、俺にとってサリナさんは掛け替えのない存在です。

これからの人生、一緒に歩んでくれませんか?」

サリナの瞳に嬉し涙が浮かぶ・・・

「はい、私の人生は前からヨシノブさんのものです。これからも末長くお付き合いください。」

「サリナ・・・」

俺はサリナを抱き寄せ、

口づけをかわすのだった。


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