第100話 研究所

来栖の研究所では騒動になっていた。

「来栖所長、これは一体何処から手にいれたのですか?」

「これがわかればノーベル賞も・・・」

研究員達は実際の効能を見てしまった者もいる、そんな効能は無いと言いきれない状態だった。

「これは国家機密にあたる物だ、私も入手方法は詳しく教えてもらえなかったんだ。」

来栖も悔しそうに研究員に告げるとほとんどの人は来栖の気持ちを察していた。

だが、末端の研究員は来栖の気持ちを理解してない者もいる。


「なんで、国なんかに従わないといけないんですか!

研究結果は広く知らしめるべきです!」


来栖に詰め寄り公開を求めるのは、三年程前に研究所に入った、高岡ミハルだった。

彼女の性格は堅い部分があり、研究結果を公表出来ない事に憤慨していた。

「そうとはいえ、あれは分析しただけだぞ、私達が作った物でも無い。」


「それでもです!あれはケガを瞬時に治せる、今までにない薬品です。

もっと広く世界で研究すべき物を、秘密にするなんて、もっての他です!

所長は医学の進歩を邪魔する気ですか!」

「そうは言ってもな、そもそも何で出来てるかもわからんものを公表しても仕方ないだろ?」

「それなら私にもサンプルを回してください!」

「これの取り扱いは指定された者だけだ、高岡くんには悪いがサンプルを回す事は出来ない。」

来栖に拒絶された、ミハルは悔しそうな表情を浮かべたが、これ以上は無駄だと引き下がる。


「ポーションはあります!」

ミハルはアメリカの研究所に資料と共に連絡を入れる、

そして、盗み出したわずかなポーションを高値で売り渡す。

「どうか、これを世界に発表してください。」

彼女自身は渡された金銭より、公表してくれる事を望んだのだが・・・


アメリカの研究所は渡されたポーションを独自に調べるが、日本と同じで成分がわからない、しかし、マウスを使った実験ではキズがふさがる事が確認できた。

この事に驚愕はするものの、実験過程でポーションはなくなってしまい、ミハルからも入手先が判明しない。


その上、世間に公表される前に各国の製薬企業に握り潰されるのだった。

一瞬でケガが治るなど、信じられない上に、自身が販売する薬に影響が出るからだ。

証拠たるポーションも無いアメリカの研究所では、製薬企業と戦う事も出来ず。

公表は見送られた。


そして、リークした事が来栖にバレる

「ミハルくん、君には失望したよ。」

「所長!」

「情報漏洩した君に居場所は無い、出ていきたまえ。」

「私は医学の進歩を・・・」

「訴えないだけでもありがたいと思え!」


ミハルは主張を曲げなかったが、

当然の如く、来栖の研究所を追放されたばかりか、何処の研究所も彼女を雇わなくなる。

研究結果を横流しするような者を好き好んで雇ったりはしない。

彼女は路頭に迷う結果となった。


「なんで、私は真実を公表しただけよ!

なんで、わかってくれないの!」

ミハルの声は誰に届く事もなく、実家に帰る事を余儀なくされた・・・

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