第65話 タケフミ落ち着く

「タケフミ、落ち着いたか?」

ショウと二人になり、タケフミも少し落ち着いてきていた。

「ごめん、ショウ。」

「いや、俺にはいいんだ友達だろ?」

ショウの優しさがタケフミにとっては救いだった。


ショウは怪我を気にしないように他愛の無いことを話したりして、気をまぎらわせていたが・・・

「ショウ、日本に帰る方法はないのかな?」

「どうしたって言うのも変だよな、俺も帰れるなら帰りたいよ。

でも、どうやって帰るんだ?」


「なあ、あのヨシノブって奴怪しくないか?」

「はぁ?お前は何を言っているんだ?」

「だってそうだろ?同じ日本人なのにあいつだけ不思議な力を持っているんだ。

きっと帰る方法も知っているに違いない!」

タケフミの悪い癖が出ていた、自分で勝手に決めつけてしまうのだ。


「落ち着けって、あの人はそんな人じゃない。」

「ショウも騙されているんだ!」

「違うって!あの人は自分の家族と話すより、俺達の事を優先してくれたんだ。」

「家族と話す?どういう事?」

ショウは日本の家族と一週間に一度日本の家族と話せる事を伝えた。


「父さんや母さんと話せるのか?」

「ああ、タケフミは携帯持っているのか?」

「いや、この前の地震で無くした・・・」

「なら、マイちゃんに借りたらいい。」

「そうだな、次はいつなんだ?」

タケフミの表情が柔らかくなる。

「2日後だな。」

「そうか、楽しみだな。」

タケフミが嬉しそうにしている姿にショウは安堵していた。


その夜、食事に来た、タケフミの姿を見て、みんなが一安心していた。

錯乱もおさまり、普段と同じとは言えないが、少し明るさを取り戻していた。

「お兄ちゃん」

「マイか?昼はすまなかった。」

「よかった、落ち着いたんだね。」

「ああ、ショウに感謝しないとな、あと、今度携帯を貸してくれよ。」

「そうだね、お父さんとお母さんにも話さないとね。」

マイも一安心しつつ、命があった事を両親に報告出来ることを喜んでいた。

そして、兄が腕を失ってしまった事を伝える事に悲しみもあった。

だが、今は連絡出来ることを喜んでいる兄の姿を嬉しく思うのであった。


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