第63話 スコール公爵

救助活動を始めて三日、アレク公爵と再会する。

アレクは脱出した王ユリウスに代わり、軍の一部をまとめて治安維持を行っていた。

しかし、軍費や食糧も失っていた上に、この未曾有の混乱の為に指揮系統も乱れていた、そんな中、港で民の救済をしている者達の事が耳に入りやってきたのだ。

アレクはその者の名前を聞き、会いに行った。


「ヨシノブ殿か!」

「アレク様、お久し振りにございます。

フラン様とフレデリカ様は御無事ですか?」


「ああ、二人とも無事だ、幸い我が家の倒壊は少なかったのだ、それより、ヨシノブは王都から出たのではないのか?

これはいったい?」

「天災の時に些細な事は置いておきましょう。

マインズ王国とマルドラド王国の力を借りて救援に来ております。

アレク様は不足している物資はありますか?」

アレクはルイスとルクスの姿を見つけて頭を下げる。

「おお、両国の救援に感謝いたす。

恥ずかしながら、食糧が些か足りん、現在王都の物流が止まっておるのでな・・・」

「ならば、少しお待ちを。」

船からパンと生鮮食品を大量におろしてきた。


「とりあえず、これを配ってください。」

「助かるが、ヨシノブ殿達は大丈夫なのか?」

「ええ、充分にあります。

アレク様もここに来ていただければ、またお渡し出来ますので遠慮なくお越しください。」

「すまぬな、ヨシノブ殿には助けられてばかりだ・・・


ヨシノブ殿、我が国がヨシノブ殿にしたことを謝罪させてくれ。」

アレクは深く頭を下げた。


「頭をおあげください。

アレク様の意思ではないことはわかっているつもりです。」

「しかし、だな・・・」

「怨恨を語っても何も生まれませんから、そんなことより、この災害を何とかしましょう。」


「ヨシノブ殿、すまん。」

アレクはつくづくヨシノブに頭が上がらなかった。

王が近隣都市に避難するなか、他国に逃亡したヨシノブが隣国から救援部隊を連れて王都の民を救ってくれている。

嬉しいやら、情けないやら、目に涙が浮かんでいた。


ヨシノブ再会後、アレクは軍を編成する。

食糧を得た事により、軍が再起動したのである。

ヨシノブと同じように、住人を救助し始めた。

王都ではヨシノブとアレクを讃える声に満ちていた。

反対に王都を捨てて逃げたユリウスを含め、王族、貴族達に対する不満が溜まっていた。

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