第26話 王の判断
カームとディーン、ルイスは話し合いをしていた。
「なんと、ルイスが短刀を渡したのか?」
「はい、私がついていながら申し訳ありません。
ただ、公表は控えておりますので、取り下げる事も出来るかと。
ヨシノブさんも意味は知らずに受け取ったようで、婚約しようとは考えておられぬ様子でしたから。」
「ふむ、ルイスよ、ヨシノブの事が好きなのだな?」
「はい、自分で選ぶならヨシノブさんを選びます。」
「よし、ならば、降嫁の手筈を整えなければならないな。
すぐには出来んが良いか?」
「お父様!ありがとうございます!」
怒られると思っていたルイスの表情が一気に明るくなる。
「父上!」
「ディーンよ、固いことをいうでない、妹が望むのだ、家族としてそれを応援するのも良いではないか。」
「しかし、王族の婚姻は政治的な意味が・・・」
「そのような事はお前が頑張れば良いのだ、家族を使い支援者を得ねばならぬ器なのか?
それにな、あの力を見たであろう。
彼なら王族に取り込んでも良いと思うのだが。」
「・・・そうですね。私がしっかりすれば良いだけの話でした、しかし、ヨシノブさんにはどう伝えますか?
彼は婚約は破棄されるものと思っていると思いますが?」
「ルイス、婚姻が結ばれるよう準備はしよう、だから、お前はヨシノブをお前の魅力で惹き付けるのだ、良いな。」
「はい、お父様、わたし頑張ります!!」
ルイスは満面の笑みで誓った。
その姿にカームは癒されていた。
王都に着いて何日かたったある日。
「陛下、マインズ王国から先触れが参りました。
第二王子ルクス様が来訪なされるとの事でございます。」
「マインズ王国から?いったい何のようであろう?
ディーン、ルイスはヨシノブの相手をするように、先触れの者を呼べ、ワシが直接聞こうではないか。」
カームは一大事の可能性も考慮して来訪の理由を事前に聞いてみることにした。
「使者殿、此度のルクス殿の来訪理由をお聞きしたいのだが?」
「はっ、貴国におられる医師から肺病の薬をいただきたく、第二王子ルクス様が来訪なされます。
どうか、我等の願いをお聞き届けくださいませぬか?」
カームによって寝耳に水であった。
そのような医師が我が国にいるなど聞いた事もない。
もしいるのなら優遇せねばならぬと考えていた。
「肺病の薬だと?あの病は不治の病であった筈、我が国にも薬はない筈だが?」
カームは困惑する。
「いえ、先日ローラン王国から来たものに医師がおられる筈、どうか捜索していただけませぬか?」
「ふむ、そのような者の事は聞いていないが、もし見つかれば薬を提供することに尽力することを約束しよう。」
「ありがとうございます。」
「して、その者の名前は・・・」
カームが聞こうとしたところに兵士が慌てた様子でかけてくる。
「陛下、一大事にございます。」
「なんだ騒々しい、客人の前だぞ。
いったい何が起きたのだ!」
「それがローラン王国の兵が国境を越えたとの事にございます。」
「なんと!騎士団を派遣せよ。近隣の町は守りを固めるのだ!
使者殿、申し訳ない、火急の事態のようだ。
ここで面会を終わる事を許してくれ。」
カームは自分の耳を疑いつつも、国民を守る為に騎士団を国境近くの町、ラードに派遣するのであった。
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