第5話 完治したら・・・

「もう大丈夫ですね。」

俺はサリナを診察していたが、病がなくなっていることを伝えた。

「ありがとうございます。」

サリナはすっかり元気になっており、以前の暗い雰囲気はなくなっていた。


「ヨシノブさん、ありがとうございます。」

リザークもサリナの完治を心から喜んでいた。

「さて、では、私は明日にでも出ていきますね。」


「いやいや、お待ちください。

出ていく必要などありませんよ。」


「しかし、お約束はサリナさんの完治まででしたし、その為にかなりのお金をいただきました。

これ以上は心苦しいものがあるのですが。」

「何をおっしゃる、ヨシノブさんのお陰で領民達も健康になっております。

どうか、今後も滞在してくださいませ。」

リザークが必死に止める中、


「ヨシノブさま、私に恩返しをさせて貰えませんか?

あなた様がいなければ私は今頃死んでいたのです。

どうか、お願いします。」

美少女であるサリナが目に涙を浮かべ、引き留めてくる手を振り払う事は出来なかった。


「わかりました、でも、報酬はいりませんからね、滞在費が無料ということで手をうちます。」

「いやいや、報酬は受け取ってください。1日金貨2枚でどうですか?」

「増えてますよ!いりませんって、そもそも使う事も無いのに貯まり続けているのですから。」

俺のスキルを使うので薬の材料費すらいらなかった。

そんな中、報酬だけが貯まり、金貨180枚がそのまま使われる事なく貯まっている。

俺とリザークは報酬について話し合いをしている中、来客が訪れる。


「モス子爵殿、御在宅か!」

入口から大声が聞こえてくる。

しかも、あわてているようで礼儀も無視して中に入ってきた。

「モス子爵!」

「これはスコール公爵、このような所にどのような御用件が?」

リザーク、サリナが頭を下げていたので同じように俺も頭を下げる。


「ここに不治の肺病を治せる者がおると聞いたのだが!」

「はい、娘サリナも治していただきました。」

「おお!そなたの娘もかかっておったな、治ったのか!」

「はい、其処にいる娘が証拠にございます。」

スコール公爵の目がサリナに向く、

「初めまして、リザーク・モスの長女サリナ・モスにございます。」

「おお、元気そうだ、私はアレク・スコール公爵だ、見た所、治っておるのだな。」

「はい、治療に半年かかりましたが、完治致しました。」

「うむ、モス子爵よ、その医者を紹介してくれぬか?

私の妻と娘も感染してしまったのだ。

どうか頼む!」

アレクは深く頭を下げる。

「頭をおあげください、ヨシノブさんどうでしょう、助けてあげれますか?」


「症状を見ないとわかりませんが、出来る限りの事はいたします。」

「おお、そなたが医者か!」

「はい、ヨシノブと申します。」

「うむ、是非私の妻と娘を助けてくれないか。」

「一つだけお願いがございます。」

「なんだ、言ってみろ。」

「私は平民ですので礼儀などは持ち合わせておりません。

その点は御容赦願いたい。」

「そんな些細な事はどうでもいい、私の名でそなたが失礼をしても罪を問わんと誓おう。」

「ありがとうございます。それならば、参りたいと思います。」

俺がスコール領に向かう話をしている中で、サリナはリザークを説得しているようだった。


「ヨシノブさま、私も御同行してよろしいですか?」

「サリナさん?いや、それは不味いのでは?ねえ、リザークさん。」

「いや、私も認めたよ、それに女性の診療をするのに女性がいた方が良いこともあるだろう?」

「確かにそれはありますね。わかりました。じゃあサリナさん一緒に行きましょうか。」

「はい!」

サリナは満面の笑顔を俺に向けてくれていた。


どうやら、半年間、接しているうちに、

俺はサリナの笑顔に癒されている事がわかった瞬間だった。

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