あだ名か…。どうすればいいんだろう。


「愛、もう、愛でいいんじゃね?」


そう思ったらもうそれしか考えれなかった。帰る時にいきなり言ってみるか。


「…愛!」

「………ぇ?え!?」


目を見開いてぽかんとしてる愛。その表情がとても可愛い。


「今、愛って言いました?私の事愛って言いました?」

「言ったぞ。」

「はわわ…。柚子が私の事を愛って言いました。」


めっちゃテンパってる。普通に可愛い。


「これから愛って言ってくれるの?」

「うん。」


はたから見たら付き合いたてのバカップル並の会話を通学路で披露する俺ら。少し恥ずかしくなって、周りを見渡した。特に周りに人がいる訳では無いが、遠目で歩き方がおかしい人を見つけた。


手に持っているものを見て誰なのか瞬時に理解した。その瞬間、戻しそうになった。いきなり手を口に当ててえずく俺を愛が支える。


「大丈夫?どうしたの!?」

「ゴホッ…ゴホッ。オェッ。はぁ。ごめん。大丈夫。」

「今日は勉強会やめとく?」

「嫌だっ、」

「大丈夫?無理はダメだからね?」

「無理じゃない。お願い、勉強しよ?」

「う、うん。」


愛に支えてもらいながら愛の家まで歩いた。あの後ろ姿、手には一升瓶。あれは親父だ。1番会いたくなくて、1番死んで欲しい人。そんな人を見てしまった。周りを見渡した後悔と親父を見てしまった気持ち悪さで戻しそうになってしまった。


愛に申し訳ない。


「ほんとに大丈夫?なんかあったの?」

「大丈…。いや、大丈夫じゃない。」

「え、病気?救急車よぶ?」

「違うんだ。少し、見たくないものを見ちゃって。」

「それって、あの道にいっつもあるの?」

「いや?なんで?」

「いや、いつもあるなら道を変えて帰ろ?って思って。」

「いつもあるわけじゃないから大丈夫。てかなんでいたのか分からない。」

「もしかして、お父さん?」

「………」


黙って頷く。愛は少し天然ぽいところがあるが、とても勘が鋭い。これは親父のことも話さなきゃ行けないのかな。


「愛、また、上手く話せるかはわかんないけど、聞いてくれる?」

「柚子の話なら何時でも、どれだけでも聞くよ。」


そう言って俺は、親父のことを、今まで誰にも言ってこなかったことを話しはじめた。

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