第13話 警察署の避難民 7
通常のゴブリンを倒し終え、俺は銃の弾を確認する。
有るにはあるが、恐らく残弾はほぼ無い。
夢の中の俺が『
だが、代償はそれだけか?それだけなら何故トリセツは俺にこの技術を教えなかった?くそ……何としてでもトリセツに聞いておくべきだった。
そこで、警察の人達の増援が到着する。彼らは村田さんの援護に周り、青いゴブリンへの攻撃を始める。
その中の一人が、拳銃を発砲する。それは確かに青いゴブリンの右肩を貫いたが、貫通するまでには至らず動きを鈍らせる程では無かった。
「クソッ!本物の拳銃でも駄目なのか!」
『全弾解放』を戸惑っている俺に、加藤さんが弱々しく声をかける。
「灰間君……これ、を……」
——加藤さんが差し出したものは、警察が使う本物の拳銃。触れることを目的としていた物だが、まさかこんなタイミングになるなんて。
「弾は……二発……」
俺は拳銃を受け取り、すぐに青いゴブリンへと近づく。
外す訳にはいかない。出来る限り近くで撃たなければ。
青いゴブリンと戦う警察の人達は、距離を取りながら牽制していた。だが拳銃は弾が無いのか投げ捨てられ、お手製の鉄槍ではその肌を貫けず、もう打つ手が無いようだった。
二人ほどやられ、起き上がる事が出来ずにいるようだ。
青いゴブリンに近づいた俺は拳銃を構える。射線上に人は居ない。俺は——見様見真似で胴へと狙いを定め、その引き金を引いた。
エアガンと全く違う反動。これなら肩が外れると言われる納得が出来る。けれど、何故か俺の体は反動に負けることは無かった。
放たれた弾丸は、青いゴブリンの脇腹へと到達する。そこから青い血が流れ始めるも、致命傷には遠い。
——もう一発。
一撃を狙うなら頭しかない。俺は再度狙いを定める。動いている状態の頭を狙うのは難しい。必死に、タイミングを狙う。
そして、ゴブリンが鉄槍を振りかぶった瞬間。俺の直感が『ここだ』と言った気がした。指が自然と引き金を引き、銃弾が発射される。
狙いは完璧だった。
だが発射した瞬間、青いゴブリンがこちらへと顔を向けた。そして、その顔を……僅かに傾けてしまう。
結果、銃弾はゴブリンの頭へは当たらず、右耳を貫くだけに留まった。
俺は外した事に一瞬戸惑うも、すぐに気持ちを切り替える。
——焦るな。俺にはまだ『全弾解放』が有る。あれならきっと青いゴブリンを倒し切れる。
深呼吸をし、銃を構える。
警察の人達は必死に戦っている。中には俺に縋るように目を向けている人もいる。
そして、呟いた。
「『
すると、両手で構えていた銃が消失していく。
消失していく中で、銃口から一発の
俺はまた時間の流れが遅くなっているのが分かった。
光る弾丸が青いゴブリンの胴を目掛け、飛んで行くのがしっかりと見えていた。
光る銃弾はその残像までもが光り輝いていた。その弾道が一本の線となり道を作り出して行く。
そして、弾丸は青いゴブリンの右胸に吸い込まれるように向かい、そのまま到達し胸を貫いて行く。
背中から抜けた光る弾丸は、尚も威力を失わず、後方に有る車までも巻き込んで消えていった。
——そこで、時間の流れが戻る。
その直後、俺の両手に痛みが襲う。腕の中が刃物にでも突き刺さされたように痛み、俺はその場に崩れ落ちる。
「ガァ……ッ!」
痛みは指先から肘、二の腕から肩へと広がっていく。
「ああああぁぁああっ!!!」
耐えきれない痛みに叫び声を上げる事しかできなかった。青いゴブリンがどうなったかなんて、確認している余裕は無い。
俺の元に村田さんが駆け寄ってくる。
「灰間君!」
痛みで目の前が暗くなり始めた。村田さんが俺に向かって必死に何か声をかけているが理解出来ない。
薄れゆく意識の中で、青いゴブリンが目に入る。
地面に転がり、そこには青い血溜まりが広がっている。
——俺は、アイツに勝ったのか。
それに安堵した事で緊張の糸が切れ、俺はそのまま意識を手放した。
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