ある神社の神様

ちょこちっぷくっきー

第1話

「退屈じゃのう…」



とある神社にある鳥居の上。



「退屈過ぎて、この口調にも慣れ切ってしまったものじゃ」



全く、鳥居の上にいるのも、もう何時間くらいだろうか。

雰囲気作りのための口調も馴染んでしまったし…。



「参拝客は、今日もたくさんなんじゃが…。加護をあげるのも、自動だからやることがないのじゃ…」



私の神社は、はっきり言って繁盛している。

神社に繁盛しているというのは正しいのかわからないけど。

他の神社はどうか知らないが、ここには私がいるからね。

神様がいれば、おのずと信仰心が生まれるし、神様がいなければ、信仰心も生まれずに神社も廃れてしまう。

信仰が先か神様が先かどうかは別に考えるだけ無駄だし両方だしで意味がない。



「それにしても…朝早くからよく来るのぅ。ご苦労な事じゃ」


「じぃーー…」


「…んん?」


「じぃー…」


「…これは珍しいのう」



私を見つめる一人の黒い髪の少女。

お賽銭を入れて、母親と帰るところで私を見つけたようだ。

私を見れる人間にはこの世界で初めて会ったかもしれない。



「どうしたの?」


「!おかーさ…あれ…」


「あれ?」


「鳥居の上に女の子…」


「鳥居の上?…何もいないわよ?」



どうやら、母親は私の事が見えないようだ。

子供が、特異的な体質だったみたい。

…隠れておくとしようか。



「でも…あれ?いない…」


「ふふっ。もしかして、神様だったのかもしれないわね」


「神様?」


「そう。この神社にいる狐の神様。何かいいことがあるかもね」


「うん…」



加護を強く、付与してあげるとしようか。

私の姿が見えるということは、何かしらの困難があるだろうし。

私の加護があれば、よほどのことがない限り襲われることはないはず。



「それじゃあ、帰りましょう」


「うん」



今度来たときは、少し、お話しできるといいのう。






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