夢の中で会う星のような少女 ―無知なる少年は、平凡な日常に花を贈った―
仲仁へび(旧:離久)
上
永野未来は、喧嘩っ早い少年だ。
短気で短絡。
人に喧嘩を売られたら買わずにはいられない、そんな性格だった。
なぜそのような性格になってしまったのかは、少年にも分からない。
彼の家庭環境はごくごく平凡なものだったからだ。
だからそれは、生まれ持った性質だったのかもしれない。
そんな彼が心を開くことができるのは、夢の中に出てくる「星の少女」だけだった。
本来なら、彼はそのまま社会の底辺に落ちるところだっただろう。
だが、心優しい少女達が彼に手を差し伸べたのだった。
未来には、頼れる存在が二人いた。
一人は、先輩である九条桐谷という女性。
彼女は、未来を助手としてスカウトした人間だった。
製薬研究を手伝わせた彼女は、一つの事に熱中できる未来の性質を見抜いていた。
彼の集中力を大いに役立てた彼女は、彼に居場所を与えたのだった。
もう一人は篠塚円。
彼女は未来の同学年の少女だ。
九条桐谷の知人として知り合った彼女は、歯に衣着せぬ物言いで未来と付き合う。
彼女は、閉鎖的な人間関係と、限定的な行動範囲を持っていた未来に、様々な世界を見せた。
未来の義理堅い長所を引き出してみせたのは、彼女ならではの功績だっただろう。
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