凪
チャプチャプチャプ……
細かいシャボン玉のような白い波が
砂浜に押し寄せてくる
波が足裏にまで到達する
砂を道連れにした波は思ったより強引で
浸した波に下半身が引きずられそうだけど
流れていく砂の感触は心地よい
寄せては返し
返しては寄せ
繰り返す静かな波音
誰もいない海
遊泳禁止の海岸
凪のひととき
振り返ると、優しい笑みを浮かべて
あなたは、上の空で遠くを見つめている
何を考えているの?
波に足をさらわれ、転びそうになると
バシャバシャッという音が聞こえ
あなたは完璧なタイミングで私の腕を取る
「どうした」
——なんでもない、ただ
「空がきれいね」
「ああ、きれいだ」
——ただ
その先の言葉を忘れる
何を言いたかったのだろう
沈黙した言葉が波にさらわれていく
その感触が、とても心地よくて
わたしはうっすらの笑みをうかべる
凪の時間
誰もいない海
永遠に寄せては返す、波打ちぎわ
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