2話 豪奢な部屋と異国の少年

レヴィははっと目を覚ました

窓から差し込む朝日、フカフカのベッド、真っ白いシーツ、そして天蓋の淡いヴェール。

ここは·····どこだ――?

レヴィは今まで置かれていた自分の状況を思い出す。

そうだ戦いで傷ついて死にかけてたんだ、俺。

ということはここは天国か――?

否、違う。

ここは天国でも地獄でもなんでもない。現実そのものなんだ。

でもだとしたら、ここは本当にどこなんだろう。

見廻りてみると今までの生活とは180度違う豪奢な部屋。

なんでそんな場所に俺は――大切に寝かされているんだろう

「あれ·····?」

その瞬間、レヴィの視界に一人の少年が目に入る

少し襟足を伸ばした黒い髪に無垢な黒い瞳そして肌は褐色の支給服 に身を包んだ少年だった。

「お目覚めになりました?レヴィ様」

彼はそんなレヴィに顔を近づけながらじっと顔を見た。

――誰だ?こいつ?

そう言いたげな表情をレヴィは浮かべながら警戒感を露わにする。

だが、夜美ノ民の少年はにこやかな表情を浮かべながらベッド脇のサイドテーブルに置いたティーポットを取った。

「いやーよかったですよ。ここに運ばれ治療されて3日間も目覚めなかったから心配していたんですよ。でも目覚めてくれて本当に良かった。旦那様もお喜びです――」

「ちょっと待て――」

レヴィは状況が読み込めない様子で彼の話を遮った

「どういう事?ここはどこなんだよ」

「あ、そこから説明します?」

そう言うと彼はレヴィに暖かい紅茶の入ったティーカップを手渡し言葉を続けた。

「ここはあなたの家です」

「は?」

レヴィはその言葉を聞いて思わず間の抜けた声を上げた

だが支給服を来た異国の少年はニコニコしながら言葉を続けた。

「レヴィ様。僕はあなたのお世話を旦那様から命じられたシユウ・ユエンです。僕のことはシユウって呼んでください」

夜美ノ民の少年シユウの言葉にレヴィは理解が追いつくことが出来なかった。

なんでこの少年は自分のことを様付してるのか、お世話とはどういう事なのか、そして彼の言う旦那様とは誰なのか。

どれから聞けばいいのかさえも分からなくなるくらいレヴィの頭は混乱していた。

「すまない·····ホント意味がわからないんだけど·····」

レヴィは頭を抑えながら一言そう言う

そんな彼を見てシユウは笑顔を絶やさずにレヴィに優しく話しかけた

「そうですね。まず旦那様に会ってもらわないと僕も出過ぎた事は言えないんですけどね――」

「だからその旦那様って誰だよ」

レヴィの凄みが入ったその一言にも、シユウの表情はかわらず飄々と答えた。

「『烈火の剣聖』といえば伝わるでしょうか?」

「――!」

レヴィはその瞬間言葉を失った。

確かに彼の言うとおりそのひとつの単語だけでレヴィは自分を庇護している人物とこの場所を理解出来た気がした。

「嘘だろ·····」

レヴィは狼狽した様子でシユウを見た。

「なんでサランド公爵家が俺をみたいな人間を保護してるんだ?」

サランド公爵家――魔法帝国が5つの国で別れてた頃、火の国の王家として君臨していた一族を祖としているという帝国随一の歴史と格式のある名門貴族。

そして現在のサランド公爵位を持つのは別名『烈火の剣聖』と呼ばれ先の大戦で英雄的活躍を果たした帝国の英雄ケンヴィード・ゼファー・ティアマート。

「何で?俺、確か·····サランド公爵家の令嬢を誘拐したんだよ·····」

レヴィには理解もできない話だった。本来なら自分はサランド公爵家にとって罪人であってこんな豪奢な部屋で静養させられている身分では無いはずだ。

だが、どういう訳かまるで客人のように振る舞われている自分。

その事実にレヴィは混乱するしか無かった。

「僕はあなたのお世話をするだけしかケンヴィード様から仰せつかってないので出過ぎた真似は出来ないんですけど·····」

シユウは一言そう言うとクロークの方へと歩いていく

「でも、あなたはケンヴィード様にとってとても大事な人間だということは承知しておりますよ。レヴィ様」

そう言うとシユウはクロークの扉を開けてあるものを取りだした

それは一着の服――きらびやかな装飾が施されたレヴィにとっては趣味の趣味の悪い貴族の服だった。

「さあ、ケンヴィード様がお待ちですよ。レヴィ様」

そう言うとシユウはいつもの様ににこやかに困惑するレヴィに話しかけた

「そんな顔しないでください。あなたにとって唯一の肉親なんですから」

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