7話 悪手の収穫
「どうもこれは失敗ってことになるのかもしれないね·····」
イスラーグは一言そう言うと苦笑した。
だがその顔にあるのは手痛い失敗を冒したような後悔よりも、それ以上に興味深いものを見出したような面白がるような笑顔だった。
「くそ·····」
そんな彼の前に
「えらいやられようだね。アキラ」
そんな彼を見てイスラーグは怒りを見せるどころか冷たく笑った
そんな彼の姿を見て、アキラはそのままイスラーグの前に跪いた
「申し訳ございません、ジェラール大佐。俺が不甲斐ない故に計画を台無しにしてしまって·····」
「別に。ちょっと悪い方向に触れちゃったけど想定内さ」
「しかし――!」
次の瞬間、アキラは身を乗り出したが、それと同時に全身に受けた魔法傷が疼いたのか苦しげに呻き声を上げた
そんな彼を前にしてイスラーグはその身体を屈めると傷ついたアキラに治癒魔法を施し始めた。
「ほら、無茶するんじゃない。傷が開くぞ」
その一言を聞いてアキラの目からポロポロと涙が零れた
鬱陶しいが彼が彼女に変わった瞬間だった。
「うわあああん!イスラーグ!あたし悔しいー!」
アキラはそう泣きむせぶとそのままイスラーグに抱きついた
「あたしは魔法騎士団のエースよ!なんであんな混ざり者にやれれなくちゃならないのよー!」
その一言にイスラーグは小さくため息を付いて言った
「レヴィはただの
イスラーグのその一言にアキラははっと彼の方を見た
イスラーグはいつにも増して冷たく冷静な表情で淡々と言った。
「彼が受け継いだ血はそんじょそこらの馬の骨のような魔血の血なんかじゃない。下手したらこちらさえも潰せるほどの
その言葉にもアキラは悔しげに唇を噛んだ。
余程負けたのが悔しかったのだろう。
「そんなことどうだっていいわ!あたしはアイツを殺したい。あたしの美しいこの顔を焼いたアイツを殺したい――!」
その一言を言った瞬間、また傷口が開いたのかアキラの顔は苦痛に歪んだ。
そんな彼にイスラーグは呆れたようにため息をついて一言言った。
「君は当分絶対安静だ。いいね」
そう言うとイスラーグはアキラに治癒魔法を施しながらこれからの
今回のこの計画は悪手だったかもしれない。
だが悪手は悪手なりに大きな収穫を得ることも出来た。
後は彼の息子――レヴィがこれからどう動くか。それが一番の懸念点ということか。
「面白くなりそうですね。ティアマート隊長」
イスラーグは笑みを浮かべ心の中でその男伝える。
ようやく巡り会えた親子の再会。今はそれを噛み締めておいてください。
だけどあなたの思う未来は絶対に訪れませんよ。彼が一番恨んでいるのはあなた自身なのですから――
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