5章 憎しみの果てに
1話 避けられない激突
イスラーグはその様子をつぶさに見ていた。
放った使い魔からの視界を共有し事が成ったことを見届けた
イスラーグは深く息を吐くとそのまま使い魔との交信を切った
そして、緑と青の瞳をゆっくり開くとその口元に笑みを浮かべた
「ねえ!イスラーグ!どうなの?上手くいったの?」
その様子を見ていた副官のアキラは興味津々に聞いてきた
そんな彼を半分鬱陶しそうな顔をしながらイスラーグは一言言った。
「第一関門は成功だ」
その一言にアキラは妙なハイテンションで言い放った
「いやーん!さっすがあたしのイスラーグが考えた完璧な作戦――」
「あら。なんの完璧な作戦かしら·····」
その女の声にイスラーグもアキラもハッとそちらを見た
そこに立っていたのは首席召喚士セシリアだった。
「ちょっと!あんた·····いつから·····」
アキラのその言葉を無視するようにセシリアは真っ先にイスラーグの執務机の前に立ちはだかった
「どうしたの?そんな怖い顔をして·····」
「あら、心当たりでもあるのかしら?」
その一言とを聞いてイスラーグは悪びれもせず淡々とそのことを吐いた
「サランド公爵家令嬢ソフィアがどうやら誘拐されたそうじゃないか」
セシリアはその一言を聞いて驚きを隠せなかった。
その事実を隠すことなく自分に吐いた事よりもそれになんの罪の意識がないような口ぶりにただただ空恐ろしい気分になっていた。
「あなたどうしてそれを·····」
怒りに震える彼女の声を面白がるようにイスラーグは口元に笑みを浮かべた
「僕を誰だと思ってるの?それくらい把握済みだよ――」
その言葉を聞いていつも冷静なセシリアは怒るしかできなかった
「ふざけないで!首謀者があなただってことくらい私だってわかってるわ――」
そんなセシリアを前にしてイスラーグはため息をついた
そして恐ろしく冷たい緑と青の瞳で彼女を見た。
「別に隠す気なんかないよ」
その一言にセシリアは思わず背筋を凍らせ黙り込む。
出てくる言葉が何も無かった。怒りも悲しみも浮かんでこない、まるで無が彼女を襲っていた
「まあ、そういう事だから。僕はこの後のことを処理しに行くよ」
そう言うとイスラーグはそのまま立ち上がるとそのままハンガーにかけてあった外套を取った。
「ちょっと待って!」
セシリアはそれを必死で止めようとした。
「どこへ行く気?まだ話は終わって――」
「セシリア。止めても無駄だよ」
イスラーグは該当をふわっと羽織ると彼女に向かって優しく微笑んだ。
「僕にも負けられない戦いがあるんだ。それを止めることは何人たりとも許さないよ」
そう言うとイスラーグはゆっくりと彼女の横をずっとすれ違うように横切るとそのままアキラを引き連れて颯爽と部屋を出ていった。
セシリアはそれを止めることが出来なかった。
その事が彼女に強い無力感を押し付けた。
セシリアただ悔しかった。恩人と元恋人その板挟み――いつもその苦しみが判断を遅くしている。そんな気がした。
だけどこれ以上誰も傷つけたくない。
セシリアはゆっくり前を向くとその手から魔法陣を描いた。
「
次の瞬間、真っ白く逞しい角が生えた馬の聖獣
「
その瞬間、セシリアは
これ以上大切な者がいがみ合うのは嫌だ――セシリアはそう胸に誓い
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