2話 レヴィの正体
智の殿堂。帝立図書館――
肌の色、魔法が使えるか使えないかで差別する魔法帝国だがこの場所も例外に漏れず差別は横行している。
非魔血が閲覧できるのはランクス曰く知恵の上澄みにすぎなく、ごく一部の書籍しか閲覧できないできない。
だけど肌の白い魔血にはそれ以上の閲覧が認められていて、非魔血には手の届かない知に触れることが出来る
なので、見た目だけは魔血の不完全魔血セドナは自然と非魔血閲覧禁止区域でも余裕の顔パスで足を踏み入れることが出来た。
それ故によくランクスの頼みを聞いて図書館で専門書を借りによく足を運んでいた。
だが今回はランクスが好む医学理系の専門書がたくさん置いてある場所をスルーしていつもはあまり足を運ばない場所へと足が向いていた
それは自分にはとても縁遠い魔血の神話や歴史、そして魔導書が沢山置いてある区域だった。
セドナは2冊の本をチョイスした。
どちらも仰々しく分厚い表紙の古い書物だった。
セドナはあるものを思い浮かべその一冊の本をゆっくり開いた
それは彼の首にかかっていたあのペンダントだった。
「魔血の起源――八賢者の伝説――」
魔血の属性は神によりアルディア大陸に天孫降臨した八人の賢者から由来している。
火の賢者、カノー
水の賢者、ラグズ
風の賢者、スルザー
地の賢者、ハガル
雷の賢者、ゾフィエル
光の賢者、ライザ
時の賢者、ニルヴァナ
死の賢者、ブラング
彼らはその属性血族の祖となりやがて彼らの子孫は魔血と呼ばれるようになる。
そして彼らの血脈は栄枯盛衰しながら現代にも生き続けている――
それは昔よく聞いた魔血の英雄叙事詩。
彼らは神話時代の賢者の末裔だと小さい頃からそう信じきっている
セドナは何気なく次の頁をペラっと開く
そこに書かれていたのは魔血神話の第二章。闇竜討伐だった。
――ある日大陸の東の端に世界を滅ぼす闇竜が現れた。
雷の国の王子クゥエルはその討伐を命じられたが、一人では到底無理な話だった。
彼は火の国の王子であるゼファーに協力を仰いだ。
二人は意気投合し、他国にも討伐に協力するよう願い出た
やがて再び再び集った賢者の末裔たちは、闇の山に棲まう闇竜に立ち向かう。
そして激闘の末、見事闇竜うち払った彼らは英雄となりそして魔血国家は彼らを元にまとまり出す
魔法帝国連邦の共同体がその瞬間誕生したのだ――
セドナその頁のある項目に目が止まった
その頁にある紋章が描かれていた
――火の国の紋章は魔法帝国連邦成立後、
魔法帝国の皇帝家ゾフィエル家に忠誠を誓うため、ゾフィエル家の紋章の雷獣よりも低い地位の精霊
紋章に描かれた一匹の火蜥蜴。
そのモチーフは見間違うはずがない。レヴィの首にかかっていたペンダントと瓜二つのデザインだった。
セドナは頁をめくり更に読み進めた。
今でもその紋章を使う一門は――存在した。
存在どころがとてつもない大物だった。
「サランド公爵家――?」
セドナは息を飲みながら一言呟いた。
一瞬何かの間違いだろうと思った。否、間違いにしか思えなかった。
かつては魔法帝国選帝侯7家のひとつで、帝国内で最も格の高い火の血の名門中の名門
そんな雲の上のような存在の良家の紋章が、異邦人の血が混じった
セドナはもう一つ机に持ってきた厳しい表紙の魔導書を開いた。
そして逸る気持ちを抑えながら読みふけり始めた。
――魔血の属性血
魔血は血で魔法を使う。
その種類は今数えられているのは火、水、風、地、雷、光、時、死の8属性のみ。
それ以外の属性を使う魔血は過去を含め存在するはずがない。
それが魔法の常識である――
「常識·····」
セドナはその一言に思わず声が出てしまう。
彼女はこの本の内容をまるまま疑っていた。
彼女の前でレヴィが使ったあの魔法――あの属性は現在確認されている属性血のどれとも当てはまらない。
『闇』――名前をつけるならそんな名前だろう
だがその名前はどの本を開いても記載されていない。否、もしかしたら意図的に載せられていないのかもしれない
サランド公爵家の紋章に『闇』の魔法――
レヴィの正体に近づいている。セドナはその手応えを感じていたが、まだまだ彼を覆う謎の全てには手が届いてない。
その謎が魔法帝国は愚かアルディア大陸さえもひっくり返す謎であることにセドナは気づいてなかった。
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