6話 相棒

 レヴィがペアを組んで任務に当たり始めたのはごく最近になってからだ。

 ザガロ・ディアルグレイ――急にあの男から呼びつけられ勝手に相棒バディされた彼はレヴィにとっては正反対な性格だった。

 暗殺業を生業にしているはずなのに彼はやたら明るくて朗らか。所謂陽キャを字で行ってるコミュ力の塊

 そんな一見暗殺業には向いてない性格だが、その中身は魔血の中でも中でもとりわけ差別され続けた死の血の一族。

 彼は右手ひとつだけで人の命を簡単に奪ってしまう。

 それを彼は――いとも楽しそうにやってのけるのだ。

「どうしたの?せっかく助けてやったのに…」

 ザガロは潜入用の警備兵の隊服を脱ぎ捨てるといつもと同じように気楽にレヴィに話しかけた

 その態度にレヴィはとにかく不服そうだった。

 ムッとした様子でザガロを睨みつけるとイラついた様子で一言言った

「助けてなんか言ってない」

 レヴィのその態度にザガロはいつもの事のように軽く笑う

「だってさあ。君の魔法は少々派手だからこういう潜入任務には向いてないよ?いつもみたいに綺麗な花火を打ち上げる度に敵さんたくさんくるんじゃない?」

「うるさい、黙れ」

 そう言うとレヴィはザガロの厚い胸板を小さく小突くとそのまま歩み出した

「とにかくさっさとズラがるぞ、長居は無用だ」

「なんで?まだ暴れ足りないんじゃないの?」

 ザガロの冗談なのか本気なのか変に無垢な質問にレヴィはイライラを露わにして彼を睨んだ

「俺たちは遊びに来てんじゃねえんだよ」

「でもさー。イスラーグは好きなだけ暴れてきていいって……」

「ばーか。あいつの話を真にうけるな」

 そう言うとレヴィはさらに赤く強い目でザガロを見た。

「俺はテロリストなんかじゃない…一応信念のある暗殺魔法士だ――」

「いたぞ!」

 その怒号は彼らのいる廊下に響き渡る

 その数は先程の比ではない、たくさんの軍靴の音。

 レヴィは冷静な表情でその手に魔力を込める

 彼の属性血は火であった。いやおそらく火であろうと言うのが正しいのかもしれない。

 彼の火は空恐ろしいほど黒々とした闇の色だった。

火炎壁ファイアウォール

 それはその瞬間警備兵たちの足元から吹き上がった。

 まるで地獄の使いのように闇色に立ち上る火柱。

 その黒い炎の壁は狭い廊下を一瞬で塞ぎ、警備兵たちを一気に足止めしてしまった

「逃げるぞ。ザガロ」

 レヴィはそう言うとずっと踵を返した

「これでアイツらのお目当ては達成したろ。俺たちの仕事はもう終わりだ」

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