第7話 新たな望み

 すっかりと食べ終え、片付けは謙太けんた知朗ともろうで行う。夏子なつこちゃんも申し出てくれたのだが、夏子ちゃんはお客さま扱いである。今夏子ちゃんはツルさんと話をしていた。


「トモ、ガレットありがとう。夏子ちゃんほんまに喜んどったわぁ」


「保護者かよ。つかメインはティラミスだろ。気に入ってくれたみたいで良かったな」


「うん。食べたことのないもんやから、それが怖かったんやけどねぇ。口に合わへんかったらどうしようかと思ってたもん」


「そうだよなぁ。と言うか謙太、お前夏子の手の甲にキスしてただろ」


「うん」


「良くやるよなぁ」


 知朗の表情は呆れた様な感心した様な、複雑なものになっていた。


「減るもんや無いしねぇ」


「そりゃあそうだろうけどさぁ。結果的に夏子も喜んでたみたいだから良かったものの」


「そこは賭けやったけどねぇ。でも夏子ちゃんは今ここにおる人の中で、僕が一番好みやて言うてたし、今ほどセクハラとかそういうのが無い時代の子やし、なんせ無邪気な子やから大丈夫やろって」


「また危険な賭けに出たもんだ」


 知朗はやはり呆れた様に言う。そして片付け終え、テーブルの端の夏子ちゃんとツルさんの元へ向かうと、夏子ちゃんが「謙太さん! トモさん!」と満面の笑顔で駆け寄って来た。


「本当にありがとう! ティラミスもガレットもとっても美味しかった!」


「ありがとう。こっちこそほんまに良かったわぁ」


「ああ」


「ツルさんに相談して良かったー。アリスちゃんのケーキと太郎たろうくんのカレー見てたから、私のティラミスもお願いしたら作ってくれないかなぁ、て思ってツルさんに相談したら、直接謙太さんとトモさんに言ってみたら良いよって。思い切って言ってみて良かった!」


「そうなんやぁ。もっと早うに言うてくれて良かったのに〜」


「ほうら、言ったじゃろう? 謙太ぼうとトモ坊は叶えてくれるとのう」


「でもやっぱり遠慮しちゃうよー。でも大満足!」


「良かったわぁ」


「おう」


「でね、私、もうひとつ食べたいものができたんだー」


「え、なぁに?」


 謙太か知朗が作れるものなら良いのだが。夏子ちゃんはいたずらっ子の様な表情になって言った。


「私、謙太さんとトモさんのお店のラーメンが食べたい!」


「へ?」


「あ?」


 謙太と知朗はぽかんと口を開けた。

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