今回は説明会with美少女


 うんまぁ、確かに奢るとは言ったが。


「人のお金で食べるご飯は美味しいですねー!」


 どんだけ食うんだこいつ。

 既に焼肉五人前は食べてるんだけど。


「どこにそんだけ入ってんのよあんた」

「しばらく何も食べてなかったんで!」

「どんな生活だよ……」


 あんまり儲かって無いのかな、あの店。

 つーか腹減ってたにしても五人前は無理だと思うんだけど。


「あ、すみませーん! コレとコレ追加で!」

「むしろ気持ち良い食べっぷりだなー」

「成長期なもので」

「いやどこが成長するんだよ」


 見た感じ私と同い年くらい……いや、ファンタジー世界だから見た目はあてにならないか。

 まーいいや。幸いなことにお金はあるから好きに食べさせとこう。


「あ、てかさ。この世界ってどんな構造してんの?」

「はい? と言うと?」

「地理とか地位とか。天界と魔王のことしか知らないんだよね」


 せっかく詳しそうな人がいるんだし、いい加減その辺りも知っておきたいところだ。


「えっとですね。ではまず人間界から説明するっす」


 ナインは言いながら指を光らせると、空中に絵をかき出した。

 丸をケーキみたいに三つに切り分けた感じだ。


「まずはここ、上の部分が魔王国マオです。主に魔族が住んでますが、色んな種族がいて魔導具の専門家が多い国ですね」


 ふむ。円の上部に国の名前を書き加えながら説明してくれるの、分かりやすいな。


「んで右下が人間の国ヒュマですね。食と科学文明が栄えてる国っす」


 ほうほう。てかこの世界にも科学とかあんのか。


「そして左下が獣人の国アニマです。一番種族が多い国ですね」


 なるほど。魔族、人間、獣人で分かれてんのか。

 分かりやすいけど……国の名前、もうちょい何とかならなかったのか?


「魔王国マオはヒュマとアニマの連合軍と戦争してたんですけど、千年前にヒュマの勇者とマオの魔王が終戦条約を結んでからは平和な世界っす」

「ふむふむ……あれ? てことは勇者って代替わりするもんなの?」

「そうですね。勇者が死んだら他の人に勇者の証拠である刻印が浮かび上がるシステムっす」

「……なるほど?」


 戦いの無い世界で勇者って役割が必要なのか疑問だけど、そこは慣習的なもんなんだろう。


「ちなみに勇者は定期的に魔王の城に遊びに来てるっすね」

「あ、なんかそれ聞いたなー。仲良いの?」

「対外的仲が良いところを見せる必要があるんすよ。じゃないとほら、魔族は長生きだから戦争を経験した人も多いですし」

「へー。意外と真面目な理由なのね」


 言われてみれば確かに合理的だな。

 知り合った人がみんなアレだから、それが世界基準だと思ってたわ。


「いや、ぶっちゃけ百合営業っすね。どこまでガチか知りませんけど毎回イチャイチャしてますよ」

「また女の子なのか。この世界の男女比率どうなってんだ」

「大体男1女9くらいっすね。だから女性同士の同性婚や一夫多妻が当たり前っす」

「へぇ……うん?」


 いや待て。それってつまりさ。


「もしかしてここってBL要素少ないの?」

「文化としてはありますけど、超レアっすね」


 おいアテナ、話が違うじゃねぇか。

 ……いや、よく思い返すと「BL文化がある」とは言ってたけどBL自体があるとは言って無かったな。

 ちくしょう、なんか騙された気分だ。


「うーん……いや別にノマカプもGLも行けるけど。でも一番はBLなんだよなー」

「望みは超薄いっすね。あ、カルビ3人前追加で!」

「まだ食うのか」

「限界を超えた先に未来があるんですよ!」

「いやいーけど、食いすぎんなよ?」


 しかし美味しそうに食べるなー。

 見てて気持ち良いわ。


 さておき、BL自体は存在するけどそもそも男が少ないからレア、と。

 文明的に薄い本も無いだろうし……しばらくは知り合いでカバーするしかないか。


「ちなみに魔王国って言ったっすけど、それとは別に魔界があります。こっちは統一国家、と言うか頂点が一人いて、その下に四人のお偉いさんが居るっすね」

「あ、そうなんだ。魔界ってどんなとこ?」

「風俗店と闘技場が八割です」

「……は?」

「魔族は欲望に忠実なんですよ。食に関しては人間界の方が進んでるっすけど、性と戦いに関しては魔界がダントツです」


 個性的すぎんだろそれ。

 エリーゼみたいな奴がゴロゴロいるんだろうか。


「でまぁ、性技と武力に優れてる奴が偉いって風潮ですね。こっちより分かりやすいですけど、完全な実力主義です。なので主にライランティリア様が信仰されています」

「それすげぇ納得いくわ」


 ライラかぁ。確かに適任かもしれない。

 あいつ『夜』の女神だし、エロいこと好きそうだもんなー。


「ちなみに宗教があるのは魔族と人間だけっす。獣人は太陽神を崇めてますけど、個人個人が敬ってる感じですね」

「なるほど。てかナイン説明上手いね」

「長く生きてますからね。教員免許も持ってますし」

「教員免許あんのかよ」

「ありますよ。適当な奴が子どもに変なこと教えこんだら大変なんで」


 確かに理にかなってんな。

 うーん。思ってたよりちゃんとしてるって言うか、やっぱりこの世界も現実なんだなー。


「後はそうっすねー。通貨は全世界共通で言語も共通っす。神界と魔界に行くには転移魔法を使わなきゃなんないですけど、結構簡単に行き来できます。海外旅行のノリですね」

「ほう。一度行ってみるのも楽しそうだなー」

「その時は私が案内しますよ。有料ですけど完璧美少女付きっすね!」

「お、それは助かるわ。ナインなら任せても大丈夫だろうし」


 こいつ何気に優秀なんだよなー。

 見た目ただの変人だけど。


「……あの、ツッコミ待ちだったんですけど」

「そなの? 美少女付きツアーとか私的には最高なんだけど」


 あと出来ればBLも付けてもろて。


「……その美少女ってのやめてくれません? 恥ずかしいんで」

「えー。自分で言ってたんじゃん」

「いや、他の人に言われんの慣れてないんすよ」


 あぁ、普段はカーネル〇ンダースロボだもんなこいつ。


「んー。まぁ前向きに善処して検討する」

「それ高確率でダメなやつっすよね!?」

「やだなー。そんなことあるよー」

「それなら良……くない!? あぶなっ! 騙されるとこだった!」


 リアクション良いなナイン。ボケがいがあるわ。


「とにかく、午後もよろしくね。まだ見てない所もあるでしょ?」

「ぐぅ……分かりました。でもその前に!」

「その前に?」

「ハラミとロース3人前追加で!」

「……マジでよく食べるな」


 よし、限界まで行ってみようか。

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