こいつマジでやべぇ
エルンハルトさんとお話しながら城に戻ると、仕事があるからと言われて門を抜けたところで別れる事になった。
「すまないな。何かあればすぐにこれを使って呼んでくれ」
そんで何か白い玉を渡された。なんだろこれ。
「通信用の魔導具だ。魔力を通すだけで使用出来る」
「おぉ、ありがとうございます」
「ではまたな」
手を振り
ふぅ。色々あったしちょっと疲れたなー。
「ただいまーっと」
ガチャリとドアを開け。
「おかえりなさい」
パタンとドアを閉めた。
今なんか、私の部屋の中に『夜』の女神がいた気がするんだが。
気の所為のだと思いたいけど、どう見ても気の所為じゃないんだよなー。
さて、どうしたもんか。
考えること十秒。
特に良い案も浮かばず、仕方なくもう一度ドアを開けてみる。
「リリィ、どうかしましたか?」
「いや何でいるんだよお前」
可愛らしく小首を傾げるんじゃない。
てか人の部屋で優雅にティーセット広げんな。
「一緒にお茶でもと思いまして、お待ちしていました」
「自由かよ」
この世界の女神やべぇな。
当たり前のように不法侵入してきやがった。
「クッキーも用意してあります。いかがですか?」
「ふむ。ここで断ったらライラは帰るの?」
「もちろんです。リリィが望まないのであれば、今日のところは出直します」
諦めはしないのか。
でも話が通じるだけマシなのかもしれない。
うーん。まぁ聞きたいこともあるし、いいか。
「分かった。でも次からは先に言ってからにしてね」
「了解しました。では、こちらへ」
「ん、ありがと」
勧められるままに高級そうな椅子に腰掛けると同時、目の前にティーカップが現れた。
一瞬びびったけど、そういやライラって最高神だもんなー。
このくらいは朝飯前なんだろう。無駄に高性能だな、こいつ。
「もっと褒めてください。私が喜びます」
「とりあえず心を読むのはやめろ。次勝手にやったら口効かないから」
「前向きに善処します」
だからそれ高確率でやらないやつだろ。
「あ、てかさ。聞きたいことあんだけど」
「私はネコもタチもいけます」
「……うるせぇ黙れ。スキルの話だよ」
いらん情報をよこすな。一瞬想像しちゃったじゃん。
ネコとタチが分からない人は一人の時にググッてみよう。
「スキルですか?」
「うん。『ステータス』」
よし、出た出た。前回と特に変わりはないな。
名前:リリィ・クラフテッド
種族:人間(まじ?)
年齢:18(変更可能)
性別:女
職業:無職
レベル:5
STR:3(+130)
VIT:5(+130)
INT:11(+50)
DEX:8(+50)
AGI:4(+130)
LUK:-15
スキル
愛Lv1 勇気Lv1 宵闇Lv1 終焉Lv1
梱包Lv1【NEW!】 初級魔法Lv1【NEW!】
ウサギLv5(MAX) チベットスナギツネLv5(MAX)
格闘Lv5(MAX) 縮地Lv5(MAX)
マクドナ〇ドLv1
成長速度20倍 ステータス異常無効
魅了効果5倍
称号
拳を極めし者
女神アテナの加護を受けし者
女神ライランティリアの加護を受けしもの
セカンドアシスタント
相変わらずバグってんなぁ、ステータス。
てかこれだよ、これ。
「この『宵闇』スキルと『
「では説明します。まず『宵闇』は周囲の光を消すスキルです」
ほう、最高神にしては微妙な加護だな。
てっきりまたチートスキルかと思ってたけど、灯りを消すだけならそうでもなさそうだ。
ライラ本人はやべぇ奴だけど、加護に関しては意外とまともなのかもしれない。
「次に『終焉』ですが、対象を強制的に終わらせるスキルです。自動蘇生能力も無効化します」
前言撤回。すげぇチート来たわ。
「スキルレベルを上げると私たち最高神をも終わらせることができます」
「いや、上げる気ないから」
使う機会無いだろこんなの。
つーかさらっと言ったけど、自動蘇生能力なんてもんがあるのか。
ファイナルなファンタジーのリ〇イズみたいだな。
「神族や一部の魔族は通常の方法では倒せませんので、オススメなスキルです」
「いやそもそも戦うつもりが無いんだけどね」
「そうですね。私が守りますから」
そういう意味じゃないんだけどなー。
「いつでも私を頼ってください。そうすると私が喜びます」
「うーん。でもこれ以上頼ることあるかなー」
一番心配してた経済面が一瞬で解決したもんなー。
勝手の分からない世界で働くって難易度高すぎるし、そこはライラに感謝してるけど。
無表情ながらに褒めてほしそうな雰囲気が出てるけど、褒めたら調子に乗りそうだから言わないでおこう。
「リリィ。私はいつでも時間を作りますので頻繁に呼んでください」
「あー……なら暇な時にお茶でもしようか」
「分かりました。甘く
「エロい事したらぶん殴るからな」
こいつ、前科あるからなー。
気をしっかり持たないと流されそうで怖いし。
すると、正に夜を体現したかのような漆黒の美しい女神は、無表情ながらも1ミリくらい眉をひそめた。
「それは困ります。私は他に愛情を伝える方法を知りません」
「え、マジで?」
「はい。どのようにしたら良いですか?」
どんだけ偏ってんだよ、ライラの知識。
しかし、どのようにって言われてもなー。
ぶっちゃけ私もよく分からん。付き合った事なんてないし。
「うーん……言葉で表したり、手を繋いだり?」
「手を、ですか?」
「リア充カップルが手を繋いでるのを見たことがある」
「なるほど。ではリリィ、手を出してください」
「え、今? 別にいいけど……」
言われた通りに右手を差し出すと、ライラは私の手を両手で包み込んだ。
柔らかくてヒンヤリしていてスベスベで、その触り心地はやっぱり女神なんだなと実感する。
こんなところまで完璧なのかこいつ。何かズルいな。
「なるほど。これは確かに良いものですね。リリィに触れるだけで幸せな気持ちになります」
うあ。こら、いま微笑むんじゃない。
手を包まれながら至近距離で美女に微笑まれたらドキドキするだろうが。
「……ぅんッ。ちょっと、ライラ? 指動かしたらくすぐったい」
「えぇ。少しでも気持ちよくなって頂けたらと」
うわ、なんだこれ。手を触られてるだけなのに気持ち良い。
細くてしなやかな指がそろりと這ってるだけなのに、背筋がゾクゾクして身体の奥がキュンと
やべぇ、これはクセになる。
「ライラ、ちょ、ストップ……ふぁッ……」
「何故ですか? これは性的な行為ではありませんよ?」
「お前分かっててやってッ……んだろ。早く手を、離せ、ってばッ……」
「嫌だったらリリィの方から手を抜いてください」
嫌じゃないから困ってんだろうが。
あああ、指の間をスリスリされるの気持ち良い。
これはズルい。えっちな事じゃないはずなのに、身体のスイッチが入っちゃってる。
「リリィは敏感ですね。愛おしいです」
慈愛に満ちた微笑み。このまま身を任せてしまいたくなるような、愛情に満ち溢れた表情。
ライラの言葉通り、甘くて
穏やかな夜の闇に包まれるような、安心できるのにドキドキするような、そんな優しい感覚に抵抗する気力が失われていく。
思わず左手の指を噛んで堪えようとするが、次々と流れ込んでくる快感を抑える事ができずに。
喘ぐような声が漏れる。
「ふッ……ラ、イラッ……だッ、めだってッ」
「良いのですよ。私に身を任せてください」
「良くないッ……からァ……」
「存分に楽しんでください。これはただのマッサージですから、大丈夫ですよ」
やがて女神の指がつい、と流れ、腕を上ってきた。
触れられた所の神経がむき出しになっているかのような快感に、やはり声を抑えられない。
吐息混じりの声は自分のものでは無いように聞こえていて、頭がぼうっとしてくる。
もっと触って欲しい。もっと気持ちよくして欲しい。
そんな想いが募っていき、そして、ついに。
「おらぁっ!」
ライラの額に頭突きを喰らわせた。
互いに仰け反り、手が離れる。
あぶねぇコイツ! 手を繋ぐだけでも危険なのかよ!
「リリィ、痛いです」
「だろうな! 私も痛いから!」
おかげで目が覚めたけどな。
さすが『夜』の女神。侮ってたわ。
今後はお触りも禁止にしよう。
「私の愛は間違っていましたか?」
「……いや、間違ってはいない。けど、段階は踏んで欲しい」
こちとら三十年近く処女拗らせてんだからな。
その辺は優しくしてほしい。
「では、手を繋ぐ前には何をしたら良いですか?」
「難しいなそれ……うーん。まぁ、おしゃべりとか」
「なるほど。では
「まて、普通に頼むからな? でないとライラと話すことも出来なくなるから」
「……善処します」
ようやく分かった。こいつの「善処します」はマジなやつだ。
本当に善処しようとしてるけど、そもそもコミュニケーション方法をエロい事しか知らないんだ。
気持ち良い=嬉しいって感覚なんだろう。
これは真面目に教育しないとヤバい。主に私の貞操が。
「良いか、まず最初は友達からだ。友達はえっちなことをしない。おーけー?」
「わかりました。善処します」
「うん。とりあえず普通に近況でも語り合おうか」
「私はリリィの一日を全て把握していますが」
「よし、まずはそこから話し合う必要があるな」
そうだ、こいつ私のストーカーだったわ。
まずはそこから矯正するか。
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