ずっと前から両思い

さい

第1話

 私には好きな人がいる。

 その人は背が高くて顔は普通だけど……優しい。

 そんな彼が私は好きだ。

 でも、私はずっと片想いをしている。

 告白する機会なんて何回でもあった……でも、言えなかった。

 それは、振られるのが怖いからだ。

 振られて今の"友達"という関係が崩れるのが怖いからだ。

 

「がんばれ!! サクラ!!」


 そう私の友達のチヨが背中を押した。


 高校の卒業式。

 それは、人生で一度しか味わえない『友とのお別れの会』。

 ここから、みんな、世界に羽ばたく。

 今日こうしている仲間が明日にはもう会えないかもしれない。


 だから、私は……ユウスケに告白するんだ!!

 たとえ、振られたっていい。

 この友達という関係が崩れてもいい。

 それでも、私が未練を残さないために──ッ!!

 それでいいんだ。


 私はチヨの方を振り向いて。


「うん!! 行ってくるね!!」と笑顔で言った。


 すると、突如、勢いよく風が吹く──


 髪がサラっと風に乗り、流れるようになびく。

 私は髪を手で抑える。

 それと共に、私の胸ポケットにつけていた卒業リボンが外れ、風に流された──


「えっ……ちょっと──」と手を伸ばすがそれは届かず、空高くへと舞い上がった──


 そのまま、風に乗り流される卒業リボンはまるで、ユウスケとのこの高校生活での時間のように、穏やかだった。


 たまに喧嘩もした。

 たまに一緒にバカみたいなことをした仲だ。


 初めは別に興味などなかった。

 だって、普通なんだもん……。

 でも、一緒にいるうちにユウスケの良さに気づいていった。

 そして、ある日、私は気づいたんだ。

 自分はユウスケのことが好きということに。


 私は走って、その卒業リボンを追った──


「すみません、ちょっと、どいてください……」


 私は人混みの中、かけ進む。


 完璧な格好で告白はしたい。

 もしかしたら、卒業リボンをすれば、告白が成功するかもしれない。

 別にそんなことはないけど、後で後悔する。


 でも、卒業リボンは地面に落ちることはなく、ずっと風に流されていく──


 そして、私は石につまずいて転んだ。


 まるで、私の恋が実らないことを予兆している。

 そんな気がした。


 すると、突然、目から涙が流れ出す。

 私は下を向く。


 別に転んで痛いわけではない。

 これは……悔しいからだ。

 完璧な自分を見せかった……。


「飛んでっちゃった──」


 でも、私は告白する……んだ。


 と、その時だった……。


「よっと──っ」と一人の背の高い男子が私の卒業リボンを、ジャンプしてキャッチした。

「え……」


 私は上を向いた。


 そして、目を大きく開く。


「大丈夫ですか……って、サクラかよ……」


 そう、そこにはユウスケがいた。


 それと共に、高鳴る心臓の鼓動は私を苦しくさせる。

 

「おい、顔……傷……」とユウスケはポッケからハンカチを取り出して顔の傷を拭いた。


 更に早くなる心臓の鼓動。

 ドキドキという音で、周りの声が聞こえない。

 でも、これだけは聞こえた。 



 その言葉を聞いた瞬間、顔を真っ赤に染める。


「立ちな……ほらよっ……」と私の両脇にユウスケは両手を挟んで、私を持ち上げた──


 そして、私は立ち上がる。


「これ、サクラのリボン?」

「うん……」

「そうか……」


 ユウスケは私の胸ポケットに卒業リボンを、安全ピンを外して刺した。


 言うんだ……今ここで。


 隅からは、チヨを含む私の友達が四人ほど私を見守っていている。


 それに勇気をもらった私は……。


「ねぇ……ユウスケ?」

「なぁ、サクラ? 場所を変えよう……」

「え、うん……」


 少し、耳を赤くしているユウスケについて行き、私は校庭の桜の木の下に立った──


「ここさ、俺たちが初めて会った場所だけど。覚えてる……?」

「うん……あの時も確か、今みたいな感じで私の入学リボンがこの桜の木に乗って、取ってくれたよね……」


 今でも覚えている。

 忘れるはずがない。

 あの時の光景は。

 今もあの時のように桜が満開だ。

 そして、あの時のような青空。

 何一つ変わらない風景だ。

 まるで、あの時に戻ったような感覚だ。

 でも、一つだけ違うことがある。

 それは、私がユウスケに思いを伝えるということだ。


「俺さ……ずっと、伝えたかったことがあるんだ……」

「わ、私も……」


 言うんだ……サクラ!!

 今ここで伝えれなくて言うの!?

 心臓の音がうるさい中、私は──


「「ずっと、ユウスケ(サクラ)のことが好きでした!! 私(俺)と付き合ってください──ッ!!」」


 私とユウスケは頭を下げた。


 え………。


「「今!?」」


 私とユウスケは頭を上げ、驚いた表情で互いを指さす。


 ***


 私とユウスケは手を繋ぎながら、みんながいる校門に戻ってくると……。


「お? ユウスケ……どうだった!?」とユウスケの友達の男子がユウスケに近づいた。


 そして、私の友達も……。


「サクラ……どうだった!? うまく行った……」


 と近づいてきた。


 そして、私とユウスケの友達は手を繋いだ、私たちの手を見て。

 言った……。


『成功したんだな!?』『うまくいったんだね!!』と──


 



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ずっと前から両思い さい @Sai31

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