第4話:呼び起こす記憶
あたりが静かになってきた。風の音も聞こえない。
アズールは疲れ果てたのか気づいた頃には寝ており、ジンもラクダの様子を見るために離れた場所にいた。
サリーは食事の後片付けをしながら、カターシャに質問攻めにされていた。
「お前、サリーと言ったな。出身はどこだ??」
「今はもうない町ですよ。緑が豊かな地でした」
「もうないだと?? お前今いくつだ??」
「私ですか?? 二十五になります」
「そうか…………(となると二十五年以内に無くなった町だよな…………まさかな)」
カターシャは何やら一人で考え事をしているようだった。
「さっき母親に料理を教えてもらったと言っていたが、今母親はどこにいるんだ??」
「…………もういないですよ。流行り病で亡くなったから」
「ーーーーそうだったか」
(私は久しぶりに母を思い出そうとした。訳あって、途切れ途切れの記憶だけれど)
「私が二十歳になったとき、住んでいた町では病気が大流行したんです。母はその病気にかかってしまったんですがら治す薬も見つからず亡くなりました。町には二百人くらいが住んでいたんですがみんな…………病気にかかってしまって、最後には…………」
「お前はどうやって生き延びた??」
「母に逃げなさいと言われたんです…………」
あの時の記憶が蘇る。消し去ろうとしたけれど、消すことのできなかった母との別れ。
暑い夏の夜だった。
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