第26話 神の残滓

◆ベルン視点


今、俺達はガルガ王都のある宿屋にいる。

ガルガに入って二日、俺達は今だモモの情報を手に入れられないでいた。


「とにかく城にいるのは間違いない、侵入方法を考えよう」


「姉君の事もあります。一度、奴隷商を当たってみませんか?」


「なにか、考えがあるのか?ラーン」


「いえ、この国が奴隷の運用に力を注いでいるので、案外、城の内情など聞けるかもと思っただけです」


「自分は水路を確認したい。先ほど、商船が水路経由で城の外堀に侵入しているのを確認しました。おそらく、城への主な物資搬入路は水路です。っ!」


「どうした、ジーナス?」


「何か、胸騒ぎがします。勇者様の身に何か、良からぬ事がおきていなければ良いのですが!」


「モモ!」


俺達は、窓から城の方向を見つめた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


◆カイエン視点


「道具?ふざけるな!女はお前と同じ人間だ!お前、なに様のつも?!」バキッ

「かはっ?!」ズダンッ、ドサッ


「乙女?!!」


うわぁ!乙女が王に殴り飛ばされた?!

俺は、慌てて乙女に駆け寄って抱き上げた。

くそ、床に激しく頭をぶつけて後頭部から、かなり血が出てる?!

ガルガ王がここまで酷い男だなんて、聞いてない!

早く治療をしないと!!


「陛下!?お待ち下さい!陛下!その者は豊穣の乙女ですぞ。それ以上はお止め下さい」


「伯爵、この生意気な女がか?だが、この女は私に歯向かったのだ、罰が必要だ」


チャキッ、なんだ?!ガルガ王が剣を取った?まさか?!


「ガ、ガルガ王!、何をするつもりです?」


「第五王子、そこを退け!其奴は私に逆らったのだ。この場で切り捨ててやる」


なんだと!乙女を切り捨てる?殺す?だと!

ふざけるな!


「許さない!そんな事はさせない」


「何?王子、お前はなにを言っているのか分かっているのか?お前の発言は国としての発言ととられてもおかしくない。このまま不敬罪でお前を手打ちにし、そのままカイオスを攻め滅ぼしても構わないのだぞ」


「…………………」


俺は乙女をギュッと強く抱いた。

乙女、巻き込んですまない。

許してくれ。

俺は最低だった。


ふっ、ガルガ王は僅かに笑うと剣を伯爵に渡して、玉座にもどって言った。


「ふん、脅しても離れぬか。それほどその女が大事か。よかろう、ならば私と勝負しろ」


「勝負?!」


「明日の日の刻正午だ、中庭で私と決闘だ。もし、そこでお前が勝てば、その女とお前の姉は殺さずに繁殖奴隷にしてやる。もし、負ければ二人とも殺す。まあ、繁殖奴隷でもほとんどの女は気が触れるがな。死んだ方がましかもしれんが」


なんだと?!くそ、だが俺に選択肢がない。


「分かった!約束を守ってくれ」


「いいだろう、ガルガ王として約束する」


なんとか、約束を取り付けたがあの王の事だ。何処まで約束を守るかわからない。

その前になんとか姉を見つけて逃げ出さないと、うう、すまない。

乙女よ、こんなに顔が腫れて可哀想に。


ガルガ王よ、俺は必ずお前に勝って、さらに姉と乙女を返してもらう!



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『源兄ちゃん、今日の夕食は何なの?』

『今日は、必殺、ドライカレーだ』

『うぇ、昨日、カレーライスだったじゃん。まさか、鍋の底のカレーの残りカスにご飯を入れてかき回すだけとか?』

『ピンポンピンポンピンポン』

『やだよ、おとといだって冷凍庫に作り置きしたカレーだったじゃん。しかも具がシャリシャリしてスカスカのじゃがいもだったし』

『うるさい、カレーを馬鹿にするな!カレーはな、冷蔵庫の残り物を全部、カレーに変えてくれる魔法のルーなんだぞ』

『カレーに豆腐はやだよ、水っぽいんだもの』

『スープカレーは経済的だ』

『源兄ちゃん?スープカレーとカレースープの違い、分かってる?』

『……………………』


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「は?!、う、ここは?」


おれはが目覚めたのは、ある豪華な天幕付きベッドの上だった。

部屋には、誰もいない。


(気づいたか?お前は一時、生死の境をさ迷っていた)


「神の残滓?!おれ、?女性を庇って?ガルガ王に!」


おれは自分の顔を触ったが、なんともない?!頭に包帯が巻いてある?


(我が最後の神力を注いだ。もう、全て治っている)


「最後?」


(そうだ、間もなく我は消える。すべての力を使いきった)


「そんな?!まだ、いろいろ聞きたい事があったのに」


(そんな悲しそうにするな。元々、もっと早く消滅するはずだったのだから)


「ビスケットは?種は?」


(お前、その悲しそうな顔は、ビスケットを心配しての顔だったのか。我は、お前の命の恩人なのに、最後まで食い物の心配とは)


「いや、それだけじゃないが」


(まあいい、前にこのスマホとお前の思考を繋いだと、言ったな。この機能をお前の世界の、いんたーねっと、というものと繋いだ。

常時はムリだが、何か必要な時に使うがいい)


「なに、ネットが使える?メールで家族と」


(疑似的なものだ、本当に繋がりがあるわけではない。お前の世界から電波で送られるデータをスマホに蓄積して、それを検索できるシステムだ。検索といってみろ)


「そうか、検索!」


うお、頭の中に○ーグルの検索欄みたいなもんがでた。


「出た、出たぞ」


(適当に入力してみろ)


「カレー粉の作り方」


[香り、辛味、色、各スパイスの種類、混ぜ方、以下表示]


「おお、このスパイスの種を出せば、カレーが作れる!万歳」


(また食い物とは、呆れる。使い方は分かったな、種とビスケット、検索はお前の魔力を元にスマホを通して具現化される。我がお前に残してやれる仕組みだ)


うお、なんか頭に蛍の光の唄が流れてるんですが?卒業式?


(時間だ。間もなく我は消える。最後にここの脱出ルートを残した。上手く使え。生きよ、生きてこの世界に多くの子を残せ。サラバだ…………)


「あ、おい?!、なんか最後に変なワードが?、……もう消えたか」


ブンッ、うお、この城の見取図だ?隠し通路満載だ。

しかし、城ってなんで隠し通路ばっか作るかな?

まあいいや、これで逃走ルート確保!あとは、このドレスだな、ふむ、ふむ、兵士控え室はここか。

手足は捲ってベルトを絞れば、デカイ服でも着れる。

まずは、ここからだな。

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