第13話 ヤケクソ

おれはその日、どうやって大樹のむろに戻ったのか、わからないくらい疲れて帰ったらしい。


気がついたら、なんか知らない服がおれに掛けてあって、湖で泳ぎ洗いしたローブと服が大樹の蔓に干してあった。

あれ?おれ、いつこれ干したんだ??

そもそも、この軍服みたいなの、おれ、町で購入してないんだが?


とりあえず、おれはビスケットにレタス、桃太郎を2個を切って乗せる。

他も同様にいろいろな野菜を、ビスケットに乗せていく。

そして、最後に軽く塩をかけて、じゃーん、サラダビスケット、完成ーっ!

◯ビスコのCMでよくやってたから、1度、やってみたかったんだよね。

こーすると、いや、オシャレでいつもの食卓が新鮮だよ。


「どれから食べようかな、、よし、君に決めた!ゲットだぜ」


おれが決めたサラダビスケットを、取ろうと手を伸ばしたら、横から誰かの手が伸びてきて取りやがった。

誰だ!食い物の恨みは絶対許さん!?ん?あれ?ここは大樹のうろの中、おれだけの隠れ家のはず???


おれは、冷や汗をかきながらそーと、手が伸びてきた方を見上げた。


「ほう、なかなか旨いな。このサラダビスケットってやつは」


「□◇◉□◆◁▣▩◇▶□???!!!!」


おれは、慌てて壁際に下がりまくった!!

な、な、な、何で痴漢天使がいるんだ??!


「これも、食っていいか?」


コクッコクッ、おれは目を見開いたまま頷くしかない。

なにがどーなっている?!

こいつ、どっから湧いて出た?


「勇者様、桶に水を汲んできたので飲み水にどうぞ?」


「………………………」ヒクッヒクッ


おれの顔は少しケイレン気味だ。

人間、驚きすぎるとなにも反応できなくなるんだな、初めて知ったよ。

強姦魔が近付いて、桶を置いていったよ。

飲み水にどうぞだってさ、ハハワハハハ、ハハノハハワハハハトワラウ。


「精霊どの、野草を取ってまいりましたぞ」


ストーカー、お前もか。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「それで俺だけ紹介がまだだったな、ベルン▪フォン▪カイオスだ、ベルンでいい」


コクッコクッ


「勇者様、私の事はジーナスとお呼び下さい」


コクッコクッ


「精霊どの、私の事はラーンと呼んで下さい」


コクッコクッ


今、おれは食卓に無理矢理座らされ、痴漢天使ベルンに腰を掴まれ引き寄せられている。

そして、強姦魔ジーナスが右側からおれの右手を掴んで、もて遊んでいる。

さらに、ストーカーラーンが後ろでおれの髪をいじっている。


ようは、野郎三人に囲まれて仲良く食事させられてるわけだ。

ん~、イケメン三人に囲まれ至福のひととき、などと誰が思うか!

なんでこーなった?!どこで間違えた?誰か教えてくれ!


「それで、明日にはここを出ようと思う」


痴漢天使が突然言った。

何?出る?出ていってくれるのか?


「そうですね、ここは何かと手狭ですし」


強姦魔が続けた。

おお、お前も出ていってくれるのか?!

なんか、うれしいな。


「そうですね、私も一緒についていこうと思います」


ストーカーが言ってくれた!

うおおお、おれは今、モーレツに感動している!

やった、やったぞ、おれは、解放された。

苦節1日?2日?、今、おれには天国の門が開いているのが見える。


「それじゃ、お前も荷造り始めとけ。だが、あまり大きなものはあきらめろ」


「は?」


なんだ?痴漢天使がおれを 見て言ったぞ?荷造り?誰が?誰の?


「おい、なにボケっとしている?持ち出す物を決めておけ」


「なんで、おれの物を持ち出すんだ?」


「そりゃあ、お前も一緒に行くからに決まってるだろう」


はい?!こいつ、今なんて言った?


「あ~、今よく聞き取れなかったんだが?」


「お前を、俺の国に連れて行くって言ったんだ」


なんだと?!


「は?なんでおれが行くんだ?!」


「俺の家族に紹介する為だ、こーゆう事はちゃんと順序だてが必要なんだとさ」


「こーゆう事?」


「俺達の結婚式だ」


はいぃ?!!


「まて、何の冗談だ?」


「冗談?俺が、お前に冗談を言うわけないだろう」


「おれは同意してないぞ!」


「俺と約束しただろう?後で言うこと聞くってな」


言ったか?言ったな、いや、あの意味ちが


「女に二言ないとも言ったぞ」


いや、それは言ってない。


「どっちにしても、連れて行くのは決定事項だ、反論は許さん」


「………………」


「その次は、私の国で結婚式です」


強姦魔がなんか言ってるな、よく聞き取れない。


「次は、私の国でお願いいたします」


ストーカーもなんか、ほざいたな。


うう、天国の門がぶっ壊れて、地獄の門が現れた。

目の前には、身長200cmの細マッチョ、三人だ。

かたや、150cmな小さい女、腕力は比べるべくもない。

はあぁ~っ、詰んだ………………




「くそ、皆、好き勝手にいいやがってもうヤケクソ、どーにでもなれだ。勝手にしろ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る