TS逃亡勇者の憂鬱
無限飛行
召喚と討伐、そして逃亡 編
第1話 召喚と討伐、そして
は~っ、今日も1日大変だったな。
おれはバックを部屋に投げこんだ。
長年勤めた会社が不況で倒産し、派遣社員とアルバイトのかけ持ちでやってきたがどうにも辛くなってきた。
だが、父子家庭で父が身体を壊し、まだ下の年の離れた腹違いの姉弟がまだ義務教育、家に金が必要だ。
29歳、童貞だ。
魔法使いになるのは、時間の問題だろう。
もっとも、おれの背丈は男子の平均より低く160cmギリギリだ。
顔は女顔で声は高め、肌は色白で昔はよく女に間違われた事もある。
今更ながら結婚は意識する事はなかった。
ふう、今は18時30分、あと少しで次のバイトの時間である。
おれは合間で趣味のネット小説をスマホで読んでいた。
その時、おれの座っていた足元が輝きだしたのだ。
よく見ると丸く円が書かれており、見たことのない文字が見えた。
まさか、ネット小説張りの事象が現実に起こると誰が想像できよう?おれは驚いて直ぐにその場から離れようとしたのだが、足が床から離れない。
おれは冷や汗をかきながら、助けを呼ぼうとしたところで意識を失った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
気がつくとガタイの大きな男達がガッカリした顔でおれの服を脱がしていた?!
は?!意味がわからん。
「な、なにをする?!」
おれは男が持っている服を引ったくると、部屋の隅に駆け込んで服を着こんだ。
パンツまで脱がすとは、何を考えている?
ズボンのポケットには、いじっていたスマートフォンが入っていた。
回りは石づくりで丸いドーム型、目の前の床には、おれの部屋に現れた魔法陣と思われるものが書かれていた。
祭壇の様なものがあり、その前に白い服を着た白ひげの老人とおれを脱がしていた変態男、それと後ろに三人ほど若い男性、全員北欧系な外国人だ。
「よくおいでくださいました、勇者様」
老人が流暢な日本語で喋ったが、何故か口の動きと日本語があっていない。
ただ、現状を打開するために会話をしなければと思い、話しを聞いた。
ある時、暗黒竜なる邪竜が現れ世界にある病魔を流行らせた。
それは女性が成人に至る前に大半が死にいたる病だった。
それは今も続いており、生まれてくる女児の7割が成人の年まで生きられないらしい。
ただ、種としての危機感からか成人した全ての女性で多産化し、双子以上で妊娠するケースがほとんどになったらしい。
また、男性の性欲も増大して犯罪が横行している。
どちらにしても人口減が現実の問題になり、大幅な男女比の差は埋めようがなく、暗黒竜の討伐に動いたが数千人を犠牲にしていまだ、討伐できていない。
そんな中、神殿に神託が降り禁止されていた勇者召喚を行い、自分がここに呼びだされたのだ。
神託は❪世界を救える者を与える❫とうもの。
何故、暗黒竜を倒せる者ではないのか?
話しは分かったが、ただの契約社員に何かできるわけもない。
正直、異世界にきた実感も無い、ドッキリの可能性も捨てきれない。
スマートフォンは圏外のままで、バッテリーも1メモリだ。
電源を落とすしかない。
なんにしても元の所に帰らないといけない。
稼ぎがしらが不在になるわけにいかない。
家族が待っているのだから。
だが、現実は厳しいものだった。
おれはなんの能力もなく、間違いな召喚を強く伝え、帰還を要請したが暗黒竜を倒さなければ送還する力が神殿に貯まらないといわれて絶望した。
途方に暮れたおれは、何か方法がないか模索していたが、近々、再び暗黒竜の討伐部隊が出発するという。
自暴自棄になっていたおれは、このままここでニート生活を続けるくらいなら闘いたいと討伐部隊に志願。
神殿の
代わりに神殿から護衛を出すとして、おれの服を脱がしていた変態を付けられた。
拒否したがそれが討伐参加の条件なので、離れて付くことを約束して護衛を認めた。
討伐部隊は僅か50名、度重なる討伐失敗は兵士の補充を困難にした。
治安維持や他国に対する牽制武力保持の部分は削れない。
特に他国は成人女性の確保に注力しており、誘拐等に対する市中の警備は重要度が増した。
どちらにしても死にに行くつもりはない。
ふと、おれの脳裏に日本神話のヤマタノオロチを退治したスサノウの戦略が浮かんだ。
暗黒竜が酒好きかどうかはわからないがなんの対策もなく行くより、やってみる方に賭けようと隊長に提案、許諾した。
一週間かけて酒を近くの町で確保し大きな樽を数個用意し、奴の住みかである湖の畔に樽を設置した。
結果は大成功。
首は一つしかなかったが20mはある巨大な黒い
おれは呑気に眠り込んだところを神殿から預かっていた、かつての勇者が使用した聖剣クサナギでその首を一気に両断。
大量の黒い竜の血を浴びてしまったが見事、討伐に成功した。
暗黒竜討伐は瞬く間に世界各国に伝わり、おれは文字通り勇者として王城に迎えられた。
正直、勇者の肩書きには興味はない。
おれの本当の望みは元の世界への帰還なのだから。
間もなく、討伐成功のパーティが始まるらしい。
どうでもいいが、帰還への協力を要請しているので心証を害するのは避けるべきである。
ところであの変態がこの国の第三王子だったらしい、この国の将来はBLな国になるのだろうか。
因みに城には侍女、メイドはいない。
女性が少ないこの世界、当然、男性が給仕を行う。
残念だが女性は貴重品のごとく、かく屋敷に軟禁の様に守られている。
自由がないのは可哀想だ。
しかし、きょうは朝から動悸がする。
微熱も感じるので風邪でもひいたのだろう。
パーティは粛々と進み王様への挨拶をしたところで、急な吐き気と目眩におそわれ昏倒した。
翌朝、昨日の吐き気や目眩が嘘の様に気持ちよく起きられたが、何かがおかしい。
髪がやたら長く、腰下まであろうか?
胸が重いと下を見ると、なにやら胸が腫れている。
ベッドを降りて鏡の前までいくと、鏡に黒髪の見知らぬ少女が映っていた。
「誰?!」
おれは慌てて自分の口をふさいだ。
やたら、声が高い。
いやな予感がする。
おれは取り敢えずトイレに駆け込んだ。
しばらくしてトイレを出たおれは、改めて鏡の前に立った。
歳のころは14~15か、俺の顔だが若返っていた。
肌もやたら白い、何故こんな事になったのか?!
どちらにしても、いまの状況はこの世界の事情を知る自分にとって、最悪な事態という事は分かる。
取り急ぎ、討伐途中で購入した防寒用ローブを頭から被り、こっそり神殿に忍び込んだ。
すると
どうやら、王と話しをしている様だ。
神殿長「まさか、本当に討伐が成功するとは思いませんまでした」
王「それはどういう事だ?」
神殿長「実は勇者さまが早くから送還を希望しており、それを断る方便として暗黒竜討伐が成れば送還の力が神殿に宿ると嘘をついていたのです」
王「それは不味い、勇者殿は体調悪化で寝込む前に、わしに褒美はもとの世界への帰還だと申しておったのだぞ。なんとかならんか?!」
神殿長「元々、送還魔法は存在しておりません。300年前の勇者もこの地で一生を終えております」
おれはこの話しを聞いてこの国が信じられなくなり、とにかく逃げだすことにした。
おれが神殿の出口に向かっていると、何故か出口付近にあの
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