第368話 ゴーレム大地に立つ!
「やっと……やっとお渡しできる……」
バルメはやっとレイに
ここ、ローズ家の屋敷の中庭にはバルメの他にレイとリディーナ、イヴ、そしてバルメの護衛である『ホークアイ』のバッツ、ハンク、ミケルがいる。人払いは済ませてあり、他には誰もいない。
「悪かったなバルメ、随分待たせた」
「いえ、……では早速」
バルメは身に着けていた
「「「で、でけぇ……」」」
「というか……」
「こ、これは……」
「派手ね」
二機の機体はそれぞれ八メートルの人型なのはメルギドで見た魔操兵と同じだが、レイ達の顔が引き攣っていたのはその色だった。
「金ピカじゃねーか……」
「こっちは真っ赤です……」
「ド派手ね」
驚く一同を他所に、バルメが自慢気に口を開く。
「それではご説明します。まずはこちら、レイ殿の専用機です。装甲は
「「「……」」」
「続いて、イヴ殿の専用機です。こちらの機体には『炎古龍』の鱗を装甲に使用しており、その他にも骨や腱など古龍の素材を主軸に製作して大幅な軽量化を実現しました。魔力コアもレイ様の機体と同様です。実験的な試みでしたが、魔金以上の装甲強度と機動性となっております。レイ様の機体にも導入しようとしましたが、素材が足りませんでした。申し訳ありません」
「イヴの機体の方が性能が良いってこと?」
「機体性能だけで言えばそうです。ですが、レイ殿の機体は既存の技術の延長線上にある機体で信頼性が非常に高いです。それに比べてイヴ殿の機体は『古龍』の素材を多用してまして、一概に優劣はつけ難いかと……」
「信頼性が低い。言い方を変えれば高性能だが不具合も起こりやすいかもと言うわけか。安全性についてはどうなんだ?」
「安全性……とは?」
「爆発や火災、故障の際に搭乗者が危険になりそうな仕様のことだ」
「そうでしたら両機とも問題無いはずです。火器類はご注文通り全て外部兵装にしてありますし、可燃性の素材も使用してません。素材に使った古龍は火属性なので、耐火性能は問題ありません」
「ならいいが……しかし、色は注文通りじゃないぞ」
「色の指定は艶の無い砂色でしたが、魔金は塗装できません。古龍の鱗も同様です。外装の色より装甲強度を優先させました。試験機の素材でしたら塗装も可能でしたが、性能が大幅に低下するとマルク様が仰られてこの形になりました」
「う~ん、仕方ない……けどなぁ~……」
「めちゃくちゃ目立つわね」
レイの機体は全身が金色に輝いており、イヴの機体は真っ赤な龍と言ってもいい機体色だ。大きさと相まって非常に目立っていた。
「二機とも対魔法防御の
「魔法が使えない結界内ではどうなんだ? 動くのか?」
「それも大丈夫です。充填された内蔵の魔力で動きますので。但し、魔力の充填は手動になりますから機体の貯蔵魔力と搭乗者の魔力が尽きれば稼働は停止し、魔法防御の効果も無くなりますのでご注意下さい」
「あらかじめ自分の魔力でチャージしなきゃならんのか……」
「以前は搭乗者が直接充填することはできませんでしたが、今回改良してそれが可能になりました。従来の魔操兵は内蔵した魔力が無くなれば停止してしまいましたが、本機は搭乗者の魔力を緊急時にも充填出来ます。現在マルク様は外部の魔素から魔力を充填出来ないかを研究中です」
「それが出来たら革命的だな。稼働時間の問題が無くなれば無敵の軍隊が作れるかもしれない。まあ、あまり現実的ではないけどな」
「どうして? こんなのが一杯あったら騎士や冒険者なんていらなくなるわよ?」
「まあ、そうだけど、問題はコスト、費用だよ」
「レイ殿の仰るとおりです。これ一機作るのにとんでもない金額と素材が必要ですので。特にイヴ殿の機体は新たに古龍一体分の素材が無ければ同じものは作れません」
「あの火口で見つけた財宝と金貨数千枚がこれにねぇ……」
「量産できなきゃ軍隊なんか作れないからな」
「でも、無理して作っちゃえば後は兵士にお金が掛からないんでしょ? それに、一年に一個とか少しづつ数を揃えればいいじゃない」
「こういう兵器は作って終わりじゃないからな。高いモノ程、保守費用も高額になる。整備費や補修費用、これを保管しておくだけでも設備費や警備費は必要だし、それに関わる人間にも当然人件費は掛かる。保守費用の目安としては製造費の一割~二割ぐらいか? 一機作るだけで、毎年、金貨三百枚かかると考えたら数なんて揃えられないぞ」
「そのとおりです。マルク様の試算では、レイ殿の機体を十機運用するとして、年間で掛かる費用は金貨五千枚。初期費用は機体込みで百万枚の金貨が必要です」
「「「ひゃ、百万!?」」」
「これはあくまでも金貨換算です。問題は素材なのです。レイ殿から提供された素材があったので製作可能でしたが、いくら金貨があっても素材が無ければ製造できません。特に魔力貯蔵用の古龍並の魔石は手に入らないでしょう」
「じゃあ、これを持ってるだけで、ものすごい金額が掛かるってこと?」
「いや、個人で所有する場合はそこまで維持費用は掛からんだろう。掛かるとすれば、壊した時にその修理費用ぐらいだ。国や組織が運用するのとは話が違うんだ。……大丈夫、心配するな」
「ホントにぃ~?」
「はい、レイ殿の言う通りです。それに、この二機の整備や点検はメルギドにお持ちくだされば、無償でさせて頂きますのでご安心ください」
「ならいいけど……」
「では、続いて武器の説明をさせて頂きます。こちらが、両機の各種兵装になります。近接武器から遠距離用の火器まで状況に合わせて装備してください。二機とも同じ武器を使用できるよう調整は済んでおりますので、取り付けるだけで使用可能です」
機体と同時に並べられた各種兵器を見て、レイとイヴはバルメにそれぞれの機体について事細かく説明を受けた。最後にバルメから魔導砲の砲弾を受け取り、メルギドからの荷物の受け渡しは無事に終了した。
(これは使えそうだが、使いどころが難しいな。一対一なら問題ないが、そうじゃない場合は目立ちすぎていい的だ……)
「しかし、何故だろう。めちゃくちゃワクワクする……」
「嬉しそうだけど、壊しても修理費は出さないわよ?」
「うっ……気を付けます」
…
……
………
レイ達が魔操兵の受け取りをしているその頃、街の中層街の安宿で、オリビアは
―『ボウケンシャレイ、ギルドホンブマデ、シキュウレンラクサレタシ』―
「これって、あのボクちゃんに冒険者ギルドに連絡しろって指令よね。至急ってのが気になるけど、そのまま伝えればいっか……」
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