第120話 黒源龍クヅリ②

 ベッドに置かれた『魔刃メルギド』と会話? をするレイ達三人。


 「とりあえず、一から全部説明してもらおうか?」


 『一から……』


 「まず、お前は何だ?」


 『黒源龍オリジンクヅリです』


 「黒源龍オリジン? そう言えば『黒龍』の魔石と素材で出来てるんだっけか、この刀……」


 『『黒龍』の祖です。今地上にいる全ての『黒竜』は私の子孫です』


 「「「は?」」」


 『わっちは この世に生まれた『始龍』の一柱です 」


 「一柱とか、まるで「神」みたいな言い方だな」


 『……遥か昔、わっちは そう呼ばれていんした』


 「普通に話せ」


 『はい……』


 「『始龍』なんて聞いたことないわ」


 『千年前に殆ど滅んだので、に生きている者はいません』


 「この世界に?」


 『数千年以上生きて、その存在が大きくなり過ぎると、そのが半物質世界、所謂『幻界』へと昇華されます。この世界で肉体を失えば、その存在は『幻界』の住人になります』


 「まるで死後の世界でもあるみたいな話だな……。(まあ、一回死んだ俺が言うのもなんだが)」


 『厳密には違います。私達は「死」がありません。肉の身体が無くなっても、その存在は消えません』


 「「死」が無いとか、意味分からないんだけど……」


 『『精霊』を使役してるエルフが言うのですか?』


 「「「え?」」」


 『『精霊』も『幻界』の住人ですよ? だだし、私達と違うのは、元の存在の自我が無く、自由意志を殆ど持たない存在ですが……』


 「まさか、『風』や『水』の存在が大きくなったのが『精霊』なのか?」


 『そうでありんす』


 「「「……」」」


 「ちょっと待て、じゃあ『精霊』みたいに『幻界』の住人とやらがこの世界にいるのか? 幽霊みたいに」


 『いるともいないとも言えますね。私達のように自由意志があり、二つの世界を認識できる「力」、こちらの物質世界で存在を維持できる「器」があれば存在できます」


 「『精霊』はどうなんだ?」


 「この世界の「魔素」と「自然」が、「力」と「器」を形成して存在できています。ただし、自由意志が殆ど無いので、エルフ族のように親和性が高い種族等に使役されねば何もできない存在ですね」


 「「使役」とか言い方が気に入らないわね」


 『それは、アナタが特に親和性が高いからです。自由意志が殆どありませんから、アナタが望むことに応えようとしているだけですよ』


 「……」


 「話を戻すぞ。それで? お前は「刀」を器にしてるってことなんだろうが、何故「死」が無いといっておきながら破壊されるのを恐れたりする? それに、自我が消えるとか言ってたな?」


 『うっ……。それは……』


 「言わなきゃ、破壊するか、亜空間に捨てるぞ?」


 『止めてくんなましっ! 言いんすっ! ……美味しい物が食べたいでありんすぇ それに雄と交尾したいでありんす 』



 「「このビッチがっ!」」


 リディーナとイヴから間髪入れずにツッコミが入る。


 (この世界にも「ビッチ」なんて言葉があるんだな……)

 

 『子孫を残すのが、そんなに悪いことなんですか? 「器」を無くしてしまうと、肉体があった時の欲求などが消えてしまうんです。繁殖の欲求も無くなりますし、美味しい物を食べたいという欲も無くなります。それが嫌なんです。そう思うのはダメですか?』


 「「うっ……それは……」」


 『そちらのレイさんなら、『竜』と交尾して、私の「器」を作れます』



 「「だからそれはダメッ!」」


 

 「『竜』なんかと交尾できるわけないだろ……」


 『屈服させて「人化」させれば可能です。レイさんが雌だったら股を開くだけで良かったのですが……。『竜』は人を下に見てるんで、人間の雄だと『竜』の雌は素直に交尾してくれません。なので、力ずくで無理矢理孕ませるしかないです。「人化」できる程の『竜』は、普通の人間じゃ屈服させるなんて無理なんで、レイさんの力ならイケる! と思って、隙をついて意識を奪いました』


 「「「……」」」


 「こいつ、やっぱこの世に存在してちゃいけないな……」


 レイは掌に魔力を集めて、「亜空間」を生み出す。


 『ま、ま、ま、待ってくんなまし !』


 「レイッ! ちょっと待って!」


 「ん? どうした、リディーナ?」


 「まだ、レイの身体をどうしたのか聞いてないわ。なんで背が伸びたのかとか、腕も治ってるし……」


 「俺の身体に何をした?」


 『言いんす! でありんすから 、それ、消してくんなまし !』


 「早くしろ。それと言葉が戻ってるぞ」


 『と、特に何もしてないです。ただ「枷」を外しただけです。あとは『再生魔法』を少し……』


 「「「枷?」」」


 『「封印」って言ったらいいですかね? 沢山掛けられてたので、解除できたのは全部じゃないですけど……』


 「ちっ、……女神か」


 「どういうこと?」


 「女神が俺の身体に何か細工でもしてたんだろうな」


 「「女神アリア様がっ!」」


 (なんかおかしいと思ったんだよなぁ……。「最高最強の身体です!」とか言ってた割には、傷の治りも普通だし、力もまあ普通よりちょっとあるかな? ってぐらいだしな。それにいくら鍛錬しても身体的な変化が殆ど無かった。毎日剣を振っても身体つきが変わらないのは明らかにおかしかったからな……)


 「おい、全部じゃないと言ったが、お前なら「封印」が全部解けるのか?」


 『これ以上は、私の魔石が全部集まらないと無理ですね。ローブと杖、鎧と弓に分けられてしまったので、「力」を発揮できません』


 「「「……」」」


 「そんなの集めさせる訳ないじゃない……。もう二度と……。レイにあんな真似させないわよっ!」


 『それは大丈夫です。今後は私が加減できますので。元々武具わたしの使用による不利益は、存在強度を計る為なんで、もうレイさんには試す必要ありませんから。ですが、その代わり、「糧」が無くなるので、今までの様な破格な効果は出せませんが……』


 「何言ってんのよ! またレイがおかしくなったらどうすんのよっ!」


 『次はちょっと難しいですね……。今は、レイさんが私の存在を認識されてますし、私を手にしてから殆ど隙らしい隙が精神に無かったんですよ? 今日はじめて、精神に揺らぎが起こったんで入り込めましたが、今後は無理でしょうね。それに、自力で私の意識を押しのけるなんて普通じゃないですよ? 「器」が無いのに無理やり押し出されたら『幻界あっち』に行っちゃうじゃないですか。……もうしません』



 「それを信じると思ってんのか?」



 『―ッ! お願いしんすっ! 『龍』助けだと思って助けてくんなましっ! それを早く消してくんなましっ!』

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