第78話 武器調達②
ゲンマの隠し倉庫で、武器の物色をしていたレイ達三人。
イヴは、自分が以前使っていた短剣の長さと同じくらいの短剣を幾つか手にとり、握りや重さを確認していた。
「これは……? 」
目に付いた一本の真紅の短剣を手にして『鑑定』してみる。
―火属性が付与された魔法短剣。使用者の魔力によって炎の威力が増減する―
「お嬢ちゃん、そいつは火属性の魔法剣だ。火口に棲む
「それは大丈夫です。これを頂きます」
…
リディーナは、
「(
どうやら精霊達に剣選びを委ねているようだ。精霊が見えない者には分からないが、精霊達がリディーナに合った剣を選んでいるのだろう。
リディーナは、選んだ剣に魔力を流すと、刀身に紫電が走る。
「うん、いいわね♪ 」
「お前ぇ、そいつは雷属性か? こいつはたまげたぜ……。それにその細剣は、この中じゃあ、一番
「フフフ……。わかったわ」
…
レイは、ゲンマの弟子の入れたお茶を飲みながら、二人の武器選びを眺めていた。この部屋に日本刀は無かったし、昨日借りた日本刀で十分とレイは思っていた。
「お前ぇはいいのか? 」
ゲンマがドカリとレイの隣りに座る。手にはいつの間にかジョッキが握られている。
(まだ朝だぞ? )
「これでいい。牽制用に投げナイフでも欲しかったが、ここのじゃ贅沢すぎる。後で街の安いヤツでも買うよ」
「そうかよ。そういやお前ぇ、リディーナが言ってた勇者を殺したって話、ありゃ本当か? 」
「ああ、四人殺した」
「……聖剣は? 聖剣は見たことあるか? 」
「ある。だが、威力を知る前に殺したからどんな物かは分からない。鎧は大した物だったがな」
「聖鎧か……。それに関しちゃ俺も詳しくねぇ。だが、お前ぇ『聖剣』ってなんだか知ってるか? 『聖剣』ってやつは、勇者が自身が作りだしたモンで、使用者によって形も威力も違う。自身の成長と共に剣も成長していくってシロモンらしい。二百年前、勇者が魔王を倒す際には、その剣で大地が裂け、山が割れ、海を蒸発させたって話しだ」
「それが本当なら俺が殺した勇者は未熟だったってことだな。とてもそんな威力があったとは思えない。急に手にした力に溺れ、増長していた。まあガキだったな」
(勇者より剣聖の刀の方がヤバかったな。あれも一種の『聖剣』にあたるのだろうか? )
「へっ、お前ぇだってガキじゃねぇか。ったく、妙に達観してやがるぜ……。まあいい、ちょっとついてこい」
ゲンマは、そう言って部屋の奥へレイを連れていく。細長い箱をゲンマが魔力を流して鍵を開ける。中には、一振りの刀が納められていた。
―『魔刃メルギド』―
「儂の師匠が二百年前の勇者の一人の聖剣を模して作ったニホントウだ。国の名前を付けるなんて大それたことしやがったが、性能は
(勇者の一人は刀を使っていたのか……。あの剣聖みたいなもんか? )
見たところ形は打刀と脇差の中間ぐらいか?少し短いが、重さは通常の倍はある。刀身は真っ黒だが、ダマスカス鋼のような刃紋が薄ら見える。なんとも厨二臭い刀だ。
(これなら身体強化のレベルを上げても耐えられそう……かな? )
「師匠はまだ未完成と言っていた。魔法剣として作成したみてぇだが、魔力を流しても反応しねぇ。何が足りねぇのか、原因はなんなのかが分かる前に死んじまったがな。ガッハッハッ」
(そんな未完成品をよこすんじゃねーよっ! )
激しくツッコミたかったが、見る限り、刀としては十分な性能はありそうだ。試し斬りをしないと何とも言えないが、今持ってる借りた日本刀よりも形や重さは俺の好みだ。試しに魔力を流してみたが何も起こらない。まるで魔力が遮断されるような感覚だ。大丈夫か、コレ?
(あとでイヴに『鑑定』してもらうか…… )
「とりあえず、使わせてもらうよ」
「ああ、好きにしな」
「そういや、爺さん『火薬』って無いか? 」
「あー? 火薬だとぉ~? ここにはねーが、んな危ねーモンどうすんだ? 」
「城壁の大砲を見た。ひょっとして『銃』もあるんじゃないかと思ってな」
「………お前ぇ、まさか、ひょっとして異世界人か? 『銃』なんて、鍛冶師でも儂らジジイぐらいしか知られてねぇんだぞ? 」
「…… 」
「沈黙は肯定と受け取るぞ? まさかお前ぇも『勇者』とはな…… 」
「少し違うがな」
「何が違ぇーんだ? 異世界からきた人間を総じて『勇者』って呼ぶんだぜ? お前ぇも、こことは違う世界から来たんじゃねーのか? 」
「そうだが、まあちょっと事情が違う。それより他言無用だぞ」
「あたりめーだ。舐めんなっ! ……ちくしょう、一鍛冶師には重過ぎる話だぜ。だが、色々合点がいった。お前ぇが見た目通りの歳じゃねーかもってことも、ニホントウを扱えるのもな…… 」
「言っておくが、異世界人が全員、日本刀を扱えるわけじゃないぞ? 」
「そうなのか? 」
(この爺さん、まるで昔の外人みたいだな。日本人ならみんな空手をやってたり、侍のように刀を振ってると思ってやがる)
「それより、『銃』って言葉を知ってるってことは……あるのか? 」
「あるにはある。だが、あんなもの使えねぇぞ? 二百年前に『勇者』が持ち込んだものをコピーしようとしたが、再現できなかった。正確には『弾』が再現できずに、大砲の大きさでようやく実戦で使えるモンになった。当時の『勇者』も銃で魔物を仕留めるのは難しいと、早々に切り捨てたって記録にも残ってる。まあ、火薬が有用だったんで、そっちは使われてるが、『銃』に関しちゃあ、細々と物好きが趣味で研究してるってレベルだ。興味あるなら後で紹介してやる」
「是非頼む」
これは驚いた。まさか地球から刀以外にも銃が持ち込まれていたとは……(素っ裸で放り出したどこかの女神とは随分待遇が違うんじゃないか? )。弾が再現できなかったと言ってたが、恐らく「雷管」だろう。そもそも火薬も知らなかったのなら雷管の構造も作り方もオーパーツだな。作れなかったのも無理もない。問題はその銃がいつの時代のものかだ。先込め式のマスケット銃や火縄銃レベルならいらないが、弾が再現できなかったんだその可能性はないな。
できれば、長距離射撃が可能な銃が欲しい。はっきり言って接近戦じゃ、銃では遅すぎる。強化した動体視力で容易に弾丸は躱せる。相手が銃の存在を知らなければ、初撃は有効かもしれないが、相手は現代の日本人だ。当然、銃の形は知ってるだろう。銃より無詠唱で魔法を放つほうがまだ効果的だ。だが、知覚できない距離からの長距離射撃なら話は別だ。防音の魔導具もある、発砲音を消して正確な射撃ができれば、先日の勇者達も容易に暗殺できたはずだ。
しかしまあ、地球の現代の狙撃銃なんかは望めないからな、それは期待しないでおくとして、火薬は手に入れたい。
「魔封じの牢屋、あの素材でできた拘束具とかは無いか? 」
「……お前ぇ、それで何する気だ? 」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます