さあ、今日中にケリをつけますよ!

 聖女の死はどうやら神殿によって伏せられているらしく、実家では特に言及もされません。


 さて神殿はどう出るのかな?




 そんなことを考えながら、仕事をします。


 隣の仕立て屋のお姉さんからの仕事で、シルクスパイダーの巣から糸を錬成しているところですね。


 シルクスパイダーはその名の通り、絹のようなツヤツヤとした輝くような糸を紡ぐことのできる糸を吐き出す魔物です。


 その巣から取れる糸は希少であり、また絹と違って魔力を帯びている点で魔法の衣服を作るのに向いています。




 作業が終わったところで、ダンジョンから一号たちが帰還します。




「本体! 不死鳥の羽根が宝箱から出ましたよ!」




「え、本当ですか!?」




 一号、二号、三号が戻ってくるなり、嬉しい報告をしてくれました。


 これで二回目のエリクサーの錬成ができます。




 そして賢者の石の素材も揃っていますから、今回はエリクサーを素材に賢者の石を錬成しましょうか。




 ともあれ今日はシルクスパイダーの糸を錬成するのに魔力を使いましたから、エリクサーの錬成は明日に回しましょう。




 今夜はご馳走ですね。


 海港都市から購入してきた新鮮な魚を使った料理にしましょうか。




 * * *




 翌日、ドッペルゲンガーたちを総動員してエリクサーの錬成をしました。


 場所はドッペルゲンガーたちの使う奥の工房です。


 相変わらず、魔力を大量に消費しますね。


 これは賢者の石も同様と見ていいでしょう。


 なので賢者の石の錬成は翌日に行うことにしました。




 シルクスパイダーの糸を納品して、賢者の石の錬成のためにマナポーションを飲んで休みます。




 そして翌朝から、賢者の石の錬成に入りました。


 ホルトルーデには普段通り、お菓子の量産と接客をお願いしています。




「さあ、いよいよ賢者の石の錬成ですよ」




「「「「「はい!!」」」」」




 素材は竜の血、辰砂、ルビー、そしてエリクサーです。


 竜の血は一号たちがレッサードラゴンを撃破して入手済み。


 辰砂は水銀と硫酸から錬成して作成しました。


 ルビーはダンジョンの宝箱から大きいのが得られたので、それを使います。


 そしてエリクサーは昨日錬成したものを使用します。




 錬成方法は素材をまとめて錬金釜に入れてよく掻き混ぜること、それだけです。


 ただし必要魔力はエリクサーの比ではありませんでした。


 ドッペルゲンガーたちと交代でマナポーションを飲みながらの作業でしたが、一日では終わりませんでしたからね。


 錬金釜に蓋をして、翌日に持ち越しです。




 さあ、今日中にケリをつけますよ!




 ドッペルゲンガーたちと協力しながら、賢者の石の錬成の続きです。


 大量の魔力を流してドロドロになった真っ赤な粘液を、ひたすら魔力で練っていきます。


 マナポーションを飲みながら交代でこの作業を続けた結果、何度目かの私の番で遂に真っ赤な石が錬成されました。




 逸る気持ちを抑えながら〈アナライズ〉をしてみると?




 賢者の石、完成です。




 ドッペルゲンガーたちとハイタッチを交わして、ついでに見学していたスロイス先生ともハイタッチして、喜びを分かち合います。




「小生、歴史的な瞬間に立ち会えて感動しきりですぞ!」




 しかしまだ早い。


 賢者の石の使い方についてはまだはっきりとしたことは分かっていません。


 本当に卑金属を黄金に変えるようなことが可能なのでしょうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る