私の要望は叶えられ続けます。(by聖女)
物心ついたときには、既に両親はなく、神殿の孤児院で育てられていました。
常に空腹でいたような気がします。
年上の子供たちには毎日のようにいじめられ、日々に希望が持てなくてただただ人生というものは辛いのだと思いながら生きていました。
状況が変わったのは、私が年長になって年下の子供たちをいじめる立場になったときでしょうか。
ああ、こうやって年齢を重ねることで強い立場を得られるのか。
でも年長の私たちをいじめる大人たちという存在もいましたから、ただ歳を重ねるだけでは、強い立場を得られるというものでもないようです。
世界は暴力に満ちあふれていました。
そんな幼少期を脱したキッカケは、神殿長が孤児院を視察しに来たときでした。
属性判別水晶で光属性を持っていることが分かったとき、神殿長は大いに喜んでくださったのを覚えています。
孤児院を出て、神殿で神官見習いとして生きていくことになり、私の周囲からは暴力は一切、なくなりました。
この立場を守りたい、もっと強い立場を手に入れたい。
私は必死に神殿の教義を勉強して、光属性魔法の習熟に務めました。
幸いなことに才能があったらしく、光属性魔法はトントン拍子に上級魔法を行使できるまでになり、――そして伝説の〈レストレーション〉を使えることが分かってから、私は聖女という最高の立場を手に入れたのです。
世界は一変しました。
これまで私のことを庇護してくれていた神殿長は、むしろ今は私の方が神殿長よりも強い立場にあるようで、私の顔色を伺っています。
日々の生活も侍従がついて、何から何まで任せられるようになりました。
そうして重い怪我や病気を治すたびに、私の立場はより強固なものになっていくのです。
楽しくて仕方がありませんでした。
そうこうしている間に、神殿の立場も強くなったらしく、王城の役人が顔色を伺うようになってきた頃、突如として私と王太子との婚約の話が浮かび上がってきたのです。
王太子は次期国王。
その妻である未来の王妃は、女性にとって最高の立場でした。
私は遂に、上り詰めるところまで上り詰めたのです。
しかし王太子の元婚約者であるフーレリアという女性について知ったとき、私は恐怖しました。
侯爵家に生まれ、勉学に秀でており、気品と美貌を兼ね備えた完璧な女性でした。
王太子が第二夫人に迎え入れるつもりでいるのだと、周囲から聞かされた私は、反射的に彼女のことを王都から追放するように、王太子に申し入れていました。
だって想像できますか?
第一夫人よりも優れた第二夫人だなんて、許されるはずがありません。
王妃という最高の立場を独占したいがために、私はフーレリアという存在を遠ざけたかったのです。
希望は受け入れられました。
どうやらフーレリアよりも私との婚姻をまとめる方が大事と見えますね。
完璧な淑女であるフーレリアよりも、私の方が立場は上。
その事実だけでも私は天にも登るような心地になるのです。
私の要望は叶えられ続けます。
王太子のもとへ行けば、異国から仕入れた美味なるお茶とお菓子をいただくことができます。
神殿では誰もが私のことを畏れ敬い、大切に扱ってくれます。
人生というのは、いかに強い立場を得るかにかかっているのです。
だから私は、私よりも強い立場をもつ次期国王である王太子を超えねばなりません。
方法は簡単です。
私が世継ぎとなる男児を生み、王太子を排すれば良いのです。
そうすれば私の子は幼い国王となることでしょう。
そうなった時こそ、国王の母親である私の立場は、この国で最高の立場になるのです。
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