第92話 船団ですか?

 ダークエルフの里からアイちゃん端末を通じて緊急の連絡が届いた。


 僕達は『ヴァレンシア』に乗り込み、全速力でダークエルフの里に向かった。




 ◇




「アレクさん!」


 最近ではすっかり普通のダークエルフとなっているシェーンさん。


 美しい外見に明るい性格も相まって、ダークエルフの里内一番の人気者となっているらしい。


「シェーンさん! テザイオンさんから緊急の連絡が!」


「はい! 森の奥から『空飛ぶ船』がいっぱい出て来て……」


「『空飛ぶ船』……それは『ヴァレンシア』みたいな?」


「そうです! 更に魔物達を変な魔法で攻撃していたから、急いでアレクさんにお知らせしました!」


「なるほど! ありがとうございます! 今から向かって見ます!」


「どうか無理はなさらずに!」


 シェーンさんを残し、僕達は森の奥に向かって向かう事にした。




 ◇




 森の上を飛び、奥に向かおうとした時、森の向こうに船が数十隻飛んでいるものが見えた。


 確かに、船から地上の森に向けて砲撃を繰り出している。


 う~ん。


 見ている感じだと……砲撃を繰り返している理由が見当たらない。


 森を焼いて何か良い事でもあるのか?



 理由が分からず、ひとまず『空飛ぶ船』の一団の近くに来てみた。


 『拡声器』を使い、声を掛けようとした瞬間。


「マスター! 向こうから砲撃がくるよ!」


 アイちゃんの素早い報告により、僕は急いで上空に『ヴァレンシアの盾』を召喚した。


 数隻からの砲撃を『ヴァレンシアの盾』にぶつかり、轟音が響き渡る。


「アイちゃん! 一旦離脱しよう!」


「マスター! ごめんなさい! 後方からも新たな船が!」


「なっ!」


 いつの間にか後方に五隻の船がこちらに砲撃準備をしていた。


「仕方ない! アイちゃん! 後方の船に砲撃! 急いで離脱するよ!」


「あいあいさ!」


 『ヴァレンシア』を急転回させ、急いで後方の一団に砲撃をお見舞いする。


 向こう船の砲撃は『ヴァレンシア』の砲撃に比べると弱いけど、それでも本体に当たれば危険なことに変わりはない。


 急ぎ放った『ヴァレンシア』の砲撃で船五隻を墜とした。


 空いた後方に全速力で脱出を試みる。




 何とか離脱はしたものの……押し寄せてくる船達が空の向こうから何十隻も見えている。


「アレク。あいつらの狙い……もしかして魔物の誘導なのかも知れない」


「魔物の……誘導?」


「ああ、あいつらは魔物に向かって砲撃をしているのではない。魔物の後ろ・・に向かって撃っていた。つまり、行き場を無くした魔物達は逃げるだろう……その先に――――ベータ領があるだろう」


「そんな!? じゃあ……この地鳴りの音は……魔物の大軍の音?」


「ああ、そういう事になるな」


 くっ……どうすれば……。


「マスター! 私に一つ、提案があるの!」


「アイちゃん?」


「空の船達は私に任せて! 『ヴァレンシア』は物凄く強いから、私一人でも十分よ! だから地上の魔物の大軍はみんなで守って欲しいの!」


「!? それは駄目だ! 幾ら『ヴァレンシア』が強くても、守りが強い訳では――」


「アレク。お前はアイちゃんと一緒に空に行け。地上は俺様とアイリスで何とかする。『ベータ領』まで避難すれば、アース殿擁する『守護神ロキ』もいる。精々足搔いてやるさ」


「ヘルドさん……」


「だから、思いっきり暴れてこい。――――死ぬんじゃねぇぞ」


「ヘルドさん達こそ…………」





「アレク……」


「アイリス。絶対戻って来るから、ベータ領を守っていてくれ」


「……うん。分かった。絶対よ?」


 こうして、僕とアイちゃん二人で上空の船団を相手する事にした。

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