最終章
第91話 ちゃんと準備してますか?
『自由国』と『魔王国』が無期限停戦条約を結んでから一年。
僕は平和な毎日をベータ領で送っていた。
魔王に就任していたから、時々『魔王国』に行っては、元魔王で魔王軍幹部となったエヴァに色々指示を出しながら過ごしていた。
エヴァは魔王ではなくなったが、事実上魔王だった頃と何も変わらない。
魔族達からは絶大な信頼を置かれ、『聖痕に勝った者』や『聖戦を終わらせし者』、『元魔王』『魔王軍筆頭幹部』『深紅の魔王』『絶望』などの呼び名で呼ばれていた。
その中でも『絶望』は、彼女はたった一度も負けた事がないらしく、勇者との話し合いで自ら剣を捨て、傷を受けた事のみで、今まで傷を負った事すらなかったらしい。
もし、彼女単騎で人間に戦いを挑んだ場合、『勇者と聖剣』の存在さえなければ、滅んでいただろうと言われている。
あんなに可愛らしい格好をしているのに……。
そんな彼女はたまにアイリスと一緒に屋敷でお茶を楽しんだりしている。
女性の話は難しくて、僕は混ざっていないが、きっと聞いちゃまずい話をしているに違いない。
アイちゃんは相変わらず、『ヴァレン教』を布教しており、それは魔王国にも広まっていき、次第にどんどん大きい規模になっていった。
中には僕を『魔王様』ではなく、『教祖様』と呼んでいる魔族まで現れる始末……。
グレンと共にリラとリルも大きく成長し、ダークキャットの成体に進化したようで、最近はギルティファングやデッドリークラップを狩って来ていた。
連携も中々見事な事に、アイリスの鎖との相性も抜群だった。
更に、『魔剣』から一度触れさせてくれと言われ、触れさせてあげると、三匹とも今まで見た事ないくらい禍々しいオーラを放ち、頭部に小さな宝石のようなモノが生えてきた。
ヘルドさん曰く、ダークキャットの中でも希少で最強ダークキャットの『ダークネスキャット』だと教えてくれた。
うちの領って……実はとんでもない戦力が充実しているんじゃ……?
領内の狩り部隊も結成されたみたいで、隊長にセイくんが着任している。
セイくんは指揮も上手だし、良い人選だと思う。
流石のシーマくん。
人を見極める目が凄いね。
最後に暗殺ギルド『ロキ』。
現在は僕のしもべになっている。
既に底辺の構成員は全員アースさんによって、倒されており、今はマスターである聖女アクィラと、五人によって構成されていた。
この五人は五本指と呼ばれており、並々ならぬ強さなのが分かった。
アクィラに命じて、全員集めて貰って、僕の部下になるように交渉した。
みんなも依頼があるから暗殺を生業にしていただけで、生活が保障されるなら問題ないとの事だ。
意外と贅沢な生活を送っていたけど、これくらいの戦力なら払っても大した事はないだろう。
一応シーマくんから経費で落として貰えた。
暗殺ギルドは名を新たに『守護神ロキ』と名乗り、リーダーをアースさんが務め、この六人は領内最強部隊となった。
戦いなんて起きなければいいんだけど……何となく、胸騒ぎがしていたから、この一年間。
念入りに準備していた。
その日がくるまで。
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