第86話 収集して良かったんですか?

 包帯幼女魔族との会談から数日。


 アイちゃんにお願いして、ヘルドさんには一度国に帰って貰い、現状を広めて貰う事にし、僕とアイリスは親交を深める為に魔王国に残る事にした。


 あれから暫く包帯幼女魔族は忙しそうに、あちらこちらに出掛けていたが、十日程して落ち着いたように魔王城に残るようになっていた。


 それと僕の『ゴミ収集』が大変気に入ったみたいで、色んな町のゴミを収集してくれないかと頼まれ、僕は快く承諾した。


 だって――僕には良い事しかないからね!



 ヘルドさんからの迎えが来るまでの間。


 魔族の生態について、色々知る事が出来た。


 端的に言えば、人間と何ら変わりのない生活を送っていた。


 子供が元気よく遊んでいるし、勉強して大人になっていく。


 大人は子供を守り、守る為に仕事に励む。


 形が少し違うだけで、人間と違う所など、何一つないのだ。



 ヘルドさんの迎えが来る二日前の朝。


 僕は頼まれたように、いつもの『ゴミ超収集』を行った。


 ――――そして。


 この事により、僕の人生は大きく変わる事となるのであった。



「あれ? アレク? どうしたの? 顔色悪いよ?」


「あ、あ、あ、あ、あ、え、え、え、え??」


「アレクったら、何を焦っているの? ほら、落ち着いて! ほら~深呼吸、すーはーすーはー」


「すーはーすーぐはっ、ゲホゲホ」


「もう~どうしちゃったのよ!」


「あ、ああ……その……ゴミ箱にとんでもないモノが入って……」


 アイリスとそんなやり取りをしていると、犯人と思われる魔族が近づいて来た。


「ふふふっ、その様子なら、無事に回収・・出来なようじゃな?」


「エヴァ! これは君の仕業だろう!」


 実は包帯幼女魔族から、名前で且つ呼び捨てしろと言われていた。


 まあ、幼女だし? エヴァちゃんと呼ぶべきかと悩んだけど、恥ずかしそうに、ちゃんはやめろと言われた。


「そうじゃ、私の仕業じゃ。そうかそうか~本当に回収出来たのじゃな? これは大助かりじゃ~」


「ん? エヴァは何をしたの? アレクの顔色凄く悪いよ?」


「ふふっ、そんなに悪い事でもなかろう? 大丈夫じゃ、アレクになら安心して任せられるのじゃ」


 驚きすぎて過呼吸になっている僕の背中を、アイリスが優しく摩ってくれる。


 そんな合間にエヴァが僕の頭を優しくなでなでする。


 幼女になでなでされる気分も悪くなくけど……なんだかな……。


「は、はぁ……どうしてエヴァがこんなもん持ってるんだよ」


「ん? 話してなかったか? それは元々・・私の物じゃから。ちゃんとそやつの許可も取ってあるからな?」


「あ……やっぱり、こっちにも意志・・……あるんだね?」


「勿論じゃ。何せ、聖剣に唯一対抗出来る魔族の切り札じゃからの!」


「んも~私にも分かるように説明しなさい~!」


 拗ねてるアイリスが可愛い。


 これ以上怒らせると、魔女パンチが飛んできそうなので……。




「えっとね。さっきのゴミ超収集で……ゴミ箱の中に…………『魔剣ヘルハザード』が入っていたんだよ……」




「えええええ!? 魔剣って、魔族にとっての聖剣じゃ?」


「ああ、そうみたい。何故かエヴァが持っていたみたいで……それを難なくくれる・・・んだから……はぁ」


「あはは~それはこちらの台詞じゃ、難なく貰える・・・お主が凄いのじゃ」


「まあ……『ゴミ』と判断付けば……ね。まあ、一旦取り出すか~聖剣も癖ありありだったけど……魔剣はどうなんだろう……」


 僕は左手に魔剣を召喚した。


 僕の左手に禍々しい剣とオーラが溢れ出した。


 ううっ……僕の左手が疼く……!




【其方が我の新たな主人か……前主人のエヴァからは念を押されている。これから宜しく頼む、ご主人】




 あれ?


 魔剣さんは聖剣さんよりもずっと常識的?


 好印象のまま、僕は魔剣と共に、右手に聖剣を召喚してみた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る