第83話 いざ!魔王城へ!

 現在、僕達は『ヴァレンシア』に乗り込み、『魔王国』の首都、『魔王城』を目指して飛んでいた。


 ヘルドさんの傷は既に全て消えており、元々の高い能力値から自然回復も恐ろしい程早かった。


 『聖剣』の特別な力さえなければ、元勇者でもヘルドさんには手も足も出ない所をみると、やっぱりヘルドさんは人類最強なのかも知れない。


 そう言えば、負けた元勇者と聖女とその兵士達はというと……。



「こら! クラフト! ここの掃除なってないわよ!」


「へ、へい! 姉御! 只今!」


 すっかり清掃員の格好が似あうようになった元勇者クラフトは、僕達の清掃員になって貰った。


 勿論、その他兵士達にも同じ格好で、船の至る所まで掃除して貰っている。


 まあ……僕の『ゴミ超収集』で一発で終わるから意味ないんだけどね。


 それと、聖女は――――


「勇者アレク様! 私の事、自由に使ってくださいまし!」


 と、物凄い美しい笑顔で、常に僕にくっ付こうとしていた。


 毎回アイリスに激おこにされ、叩き出されてもいつの間にか僕の隣に来ている。


 因みに、魔女は大嫌いだけど、僕が放った聖剣の光は、勇者歴史で最も光り輝く聖剣の光だったらしく、聖女は「真の勇者様ですわ!」と言って、僕がアイリスを嫌いになったら今すぐ叩き出すと話すと、嫌な顔一つしなくなった。


 流石は腹黒聖女。


 こうして元勇者と聖女の愉快な仲間達(?)を連れて、僕達は遂に『魔王国』の首都に辿り着いた。




 ◇




 魔王国の首都『魔王城』の前には物々しい雰囲気の魔物や魔族で埋め尽くされていた。


 みんな目が真っ赤になるくらい真剣にこちらを見つめている。


 あ、魔族だから元々目が赤いのか?



 アイちゃんが『ヴァレン教』布教の為に『ヴァレンシア』を改造して作った『拡声器』を使う事にした。


 まず最初に、聖剣に思いっきり輝くように命令すると全力で輝いてくれた。


 初めて知った事なんだけど、聖剣には特殊効果があるようで、主と認めた相手に『聖剣の祝福』を与えるみたい。


 元勇者クラフトくんは貰えなかったみたいだけどね……。


〈ステータス〉――――――――


 能力 - ゴミ箱lv10+聖剣の祝福


 体力 - X(聖剣の祝福)

 魔力 - S

 力 - X(聖剣の祝福)

 素早さ - S

 精神力 - X

 運 - X


 [スキル]

 ゴミ収集(強化)

 ゴミ超収集

 クリーン

 ゴミ召喚(強化+特殊強化)

 ゴミ圧縮


 [奥義]

 ゴミのリサイクル

 聖剣再来(聖剣奥義)


 [秘儀]

 ゴミの祝福


―――――――――――――――


 となっている。


 どうやらステータスの体力と力を三段階も上げてくれる上に、もしXに到達する場合、問答無用でXに上げてくれるみたい。


 流石は世界に一本しかない意志を持った聖剣である。


 以前クラフトくんが使った聖剣専用奥義『聖剣再来』とは、『聖剣』の本来の力を強制的に引き出す奥義みたいで、一度使用すると三分間聖剣の最大出力を出し続ける事が出来て、終わると再使用まで七十二時間掛かるという事だ。


 まあ、僕には全く無意味な奥義である。


 だって、僕が命令すれば、今の聖剣は最大出力なんて簡単に出してくれるからね。


 ――――こんな感じでね。



 聖剣の眩しい光に魔王軍の者達が分かりやすく絶望している。


 どうやら感情自体は人間と大きくは違わないみたいね。


 魔物達も呪われし森と違い、知性的だし。




「あ、あ、まいくてすと? まいくてすと?」


 アイちゃんから、最初喋る前は必ずこれを言えと言われている。


 どういう意味なのかは全く分からないけど、煽ったり、宣戦布告の言葉じゃないといいけど……。




「僕の名前はアレクです! 人間を代表として来ました! ここに聖剣もあります! 僕としては、話し合いを求めています! どうか、魔王国の代表の方と話をさせてください!」




 おお~僕の声が物凄く広がっている。


 不思議な感覚である。


 魔王軍もいきなりの提案にオロオロしている。




「再度告げます! 僕は戦いたくはありません! この戦いが起きた正確な経緯も分かっていません! どうか、魔王国の皆さんの声を代表して僕に届けてはくれませんか? この聖剣に誓い、みなさんが敵でないなら一切危害を加えないと誓います!」


 僕のドヤ顔の演説が終わった。


 あとは、魔王国次第だね!




「ねえ、アレク? 聖剣に誓っても、魔族としては仇みたいなもんだから、寧ろ怒るんじゃない?」


 ……


 …………


 言われて見ればそれもそうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る